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判例 59
店舗の耐震性の不足は賃貸借契約の更新拒絶の理由になるか
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2216号より)
平成25年12月24日 東京地裁平23(ワ)13905号 棄却(控訴) 店舗の賃貸借契約において老朽化、耐震性の不足、建替えを理由とする更新拒絶につき立退料の申出による正当事由が拒否された事例
この判例から学ぶ
1.築44年経過した5階建てのビルの1階部分をビル建設時より賃借し、テナントとしてレストランを経営して来た被告(賃借人Y72歳)に対し、ビルの所有者(原告X)がビルの老朽化、耐震性の不足(ここでは建設会社の診断内容省略)でただちに取り壊す必要があり、跡地を駐車場にする等の理由で、財産上の給付の申し出として借家権相当額とする2、985万円の立退料を提示し、契約更新することを拒絶した。本件ビルの現況は、他に入店しているテナント店舗はなく、現況理解の上でビルの大手建設会社の関連会社が低廉な賃料で期間を限定して事務所として使用しているのみである。
2.Yが経営する本件レストランは、従業員9名(内3名は40年以上在籍)の欧風料理店で、東京赤坂見附駅まで徒歩5分の立地条件や開業以来44年の間に複数の著名人が来店しているその歴史や、開店当時よりの凝った造りがなされ年月を経て風格も増した内装等の店内の雰囲気も売りにしており、家賃は月額50万円(税抜)で、年間の売上高はおよそ1憶2、000万円である。Yの主張によると、仮にXから財産上の給付の申し出により契約更新拒絶の正当性が補完されても、その立退料の額は3憶数千万円となるとして立ち退きを拒否した。
3.裁判所は判断するに当たって、賃貸人による更新拒絶が正当と認められる事由に次の3つを挙げている。
(1)建物の賃貸人及び賃借人が建物の利用を必要とする事情
(2)建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況
(3)建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることはできない(借地借家法附則12条、借家法1条の2)。
そして、この正当事由の有無の判断に当たっては、上記(1)を主たる要素とし、上記(2)及び(3)は従たる要素として考慮すべきであり、上記(3)については、それ自体が正当事由を基礎付ける事実となるものではなく、他の正当事由を基礎付ける事実が存在することを前提に、当事者間の利害の調整機能を果たすものとして、正当事由を補完するにすぎないものであると解するのが相当である。
4.以上を前提として、上記(1)に関しての裁判所の判断は次の通りである。
Xは本件物件の使用について、差し迫った自己使用の必要性があるとは認められない。一方Yは他の場所において本件レストランと同等の集客能力を備えた料理店を開設することは困難というべきで、高齢のYや従業員の一部の生活にも影響を与える恐れがあり、Yには本件店舗の使用を必要とする相当に切実な事情があるものと認められる。
5.次に、上記(2)に関しての裁判所の判断は下記の通りである。
耐震診断自体、その報告書の「まとめ」の項において、診断の結果は「耐震性に疑問あり」と判定される旨を記載するに止めていて、耐震強度が必要な建物である旨をいうにすぎず、直ちに取壊しが必須の急務であるということはできない。テナントはYのレストラン1店のみになっているのは、原告が他にテナントを募集するなりして本件物件の付加価値を高めるなどしてこなかった結果であり、原告の自己責任というべきものである。そして原告自身本件建物を取り壊した後の敷地につき、駐車場にするのみで、その最有効使用を検討しているものでもない。
6.上記(3)については、裁判所は次の通り述べている。
原告は本件建物の明渡しと引換えに、2、985万円の給付をする旨を申し出ているが、上記3の(3)で説示したように、この申し出については、それ自体が正当事由を基礎付ける事実となるものではなく、正当事由を補完するにすぎないものである。そして、上記のとおり、本件更新拒絶の通知については、その正当事由を基礎付ける事実がおよそ認められないのであるから、原告の立退料の申し出によってもなお正当事由を認めることはできない。
7.よって、裁判所は原告の請求は理由がないとし、これを棄却した。
8.本件はフランチャイズに関する判例ではないが、フランチャイズ事業に於いてはテナント入店により店舗物件を取得するケースが多い。そこで今何かと問題になる老朽化ビルの耐震強度の問題と共に、裁判所が挙げる賃貸人による更新拒絶が正当と認められる3つの事由が実務上大変参考になると思われるので、ここに紹介した。
資料出所;判例時報社発行の判例時報2216号
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