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判例 57
 建物の譲受人が建物の地下でそば屋を営んでいる賃借人に対し看板等の撤去を求めた
 のは権利の乱用に当たるとされたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2187号より)
1審東京地裁平成24年1月19日判決、2審東京高裁平成24年6月28日判決 建物明渡等請求事件、最高裁平成25年4月9日3三小法廷判決、破棄自判 建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾を下に1階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において、建物の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることが権利の濫用に当たるとされた事例
この判例から学ぶ
1.賃借物件で事業を営むときには、看板、サービスマーク、装飾、ショーケースやサンプルケースなどの設置の方法や場所について、物件所有者との間で交わす契約内容は大変重要である。特にフランチャイズ事業においては、本部がフランチャイズチェーンの名称やイメージを表示するために看板等の設置についていろいろ要求することが多い。本件は賃借物件が譲渡されたとき、譲受人(原審では原告、最高裁では被上告人)と従前から入店していたテナント(原審では被告、最高裁では上告人)との間のトラブルである。本件の経緯と事実関係は以下の通りである。
2.物件は駅に近い繁華街に位置する地上4階地下1階建ての建物で、新たに本物件の所有者になった譲受人が、地下1階のテナントに対して所有権に基づき、本件建物部分の明け渡し及び賃料相当損害金の支払いと看板等の撤去を求め訴えを起こした。
3.テナントは、昭和39年頃から地下1階で「そば屋」を営み、当時の建物所有者の承諾を得て1階部分の外壁、床面、壁面等に看板等を設置、いずれも地下1階の本件建物部分へ続く階段の入口及びその周辺に位置し、遅くとも平成8年9月までに賃借権を取得していた。そして平成22年4月に本物件を譲受人が譲りうけた時には、本件建物の賃借権の負担等が譲受人に承継されること、本件建物に看板等があることなどが売買契約書に記載されていた。
4.譲渡人の訴えにより原審(1審地裁と2審高裁)は、テナントは遅くとも平成8年9月まで本件建物部分についての賃借権を得たものと認定しつつも、本件看板等の設置権原はその賃借権の範囲に含まれていないから、テナントはこれを譲受人に対抗することはできず、譲受人の請求のうち、本件看板等の撤去を求める部分だけを認容し、これに仮執行宣言を付した。
5.これを不服としたテナントは最高裁へ上告した結果、最高裁の判決は原審を破棄し、譲受人がテナントに対して看板等の撤去を求めることは、権利の濫用に当たるとし、これに仮執行権を付したことは、裁量権の行使を誤ったと評さざるを得ないと判決した。その理由は、1..看板等は建物部分と社会通念上一体のものとして利用されてきたこと、2..看板を撤去するとなると、地下1階に店舗があることを示す手段が失われ、営業の継続が困難となること、3.看板等が存在することにより建物の所有に具体的な支障が生じるともうかがえない、4.看板等の設置が本件建物を購入した際の売買契約書の記載などから建物の所有者の承諾を得たものであることは、建物の譲受人においても十分知り得たものと言うことができるなどである。
6.上記の通り、権利の濫用とされた理由は明確でわかりやすい。尚、譲受人の上記各請求のうち、本件建物部分の明け渡し及び賃料相当損害金の支払を求めた部分については、これを棄却すべきものとした原審に対して譲受人からの不服の申し立てはなく、最高裁の審理判断の対象は、本件看板等の撤去を求める部分に限られている。
7.本判決には最高裁の裁判官が、借地借家法31条にいう建物の範囲に関して補足意見を付けており、実務上参考になるので次に紹介しておきたい。「多数のテナントが入っているビル等において、例えば1階のホールにテナント名を表示した看板が掲げられていたり、各テナントの共有部分の廊下の壁面にテナント名を表示することができ、あるいは、ビルに入居するテナントを表示する外部看板が設置され、テナントは別途の負担なくその看板にテナント名を表示することができる場合や、また多数の飲食店が入店する雑居ビルで、共用の廊下や階段に特別の負担なく各店舗の看板が設置されているような場合には、それら看板への表示は、当該建物賃貸借契約書に明示されていなくても、同賃貸借契約書の内容をなしているものということができる。従って、借家人が同条により第3取得者に対して借家権を対抗することができる場合には、上記の看板等に表示する権利も当然に対抗することができるものというべきであって、それらの看板等が借家人の独立の専有部分に存しないとの一事をもって同条の適用を否定する原判決の解釈には賛同することができない」
8.さらに原審が看板等の撤去について確定を待たずに仮執行を付けたことに対して、早期に実現すべき特段の利益は何ら認められないとし、原審が裁量権の行使を誤ったと評せざるを得ないと考えられる、と補足意見は述べている。
9.最後に『判例時報』は上告代理人(弁護士2名)の次のような上告受理申立て理由の一部を紹介している。「建物及び看板の利用状況については、買主は十分知って購入しており、そもそも当初は看板撤去請求要求はしておらず、店舗明渡しの手段として看板撤去要求を始めた経緯等からみて、判例にしたがい権利濫用になることは間違いないはずである」
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の2187号
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