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判例 55
ショッピングセンター運営会社に来店客への安全配慮義務が求められたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2196号より)
平成25年3月14民1部判決、一部認容、一部棄却(確定) 損害賠償請求事件、岡山地裁平23(ワ)1389号 75歳の女性客がショッピングセンターのアイスクリーム売場で転倒受傷した事故につき、ショッピングセンター運営会社の不法行為に基づく損害賠償責任が認められた事例(過失相殺2割)
この判例から学ぶ
1.被告(Y)が運営するショッピングセンター(以下SCとする)のテナントである1階FFタイプのアイスクリームショップ前でショッピングカートを押して歩行中の女性の買物客(原告X)が、足を滑らせて転倒し、腰椎圧迫骨折等の損害を負い入院治療を余儀なくされたのは、Yに顧客に対する安全配慮義務に違反した過失があり、通路に滑りやすかった瑕疵があったと主張し、2669万円余の損害賠償請求をおこなったのが本件のあらましである。 
2.これに対し被告SC側は、原告には足元に対する注意を怠って歩行したという過失があり、それが本件事故の主要な原因であるから、少なくとも9割の過失相殺がされるべきであり、原告が主張する後遺症障害についても本件事故との因果関係は存しないと反論した。
3.裁判所の認定事実と判断は次の通りである。
(1)本件売場は主要通路沿いにあり、付近において床面にアイスクリーム等が落下していることもある。事故当日は値引き販売が行われ、ハロウインでもあり多数の客が集まり約20名の客が行列をつくっていた。原告はショッピングカートを押してこの店舗前を歩行中に左足を滑らせ転倒したが、その後ろあたりの床面に紫色の汚れが残っていた。靴は特に滑りやすい状態にあったわけではない。
(2)本件店舗では、午後6時までは一部の時間帯を除き外部の清掃業者に清掃を委託。その後は被告の従業員が巡回して汚れを発見、または館内放送で呼び出されて清掃をしていた。事件当日は3名の従業員がこれに従事していた。
(3)これらの事情を総合すると、原告が転倒したのは本件売場の通路上に落ちていたアイスクリームに足を滑らせたことによるものであると推認することができ、これを覆すに足りる適格な証拠はない。
(4)本件店舗のようなSCにおいては、不特定多数の顧客が来店するので、SCの運営者はその安全を図る義務がある。被告は、本件売場付近に十分な飲食スペースを設けた上で顧客に対しそこで飲食するよう誘導したり、外部の清掃業者に対する清掃の委託を閉店まで延長したり、被告の従業員の巡回を強化するなどして、本件売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況が生じないようにすべき義務を負っていたというべきで、被告はこれらの義務を尽くしていないことは明らかであり、被告に不法行為に基づき本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。
(5)他方で、原告としても本件売場に約20名の客が行列しており、通路上にアイスクリームの一部が落下して滑りやすくなっていることも予測できたというべきで、足元に注意を払うべきであったのにこれを怠った過失があるというべっきである。もっとも、ショッピングカートを押して歩行しており前方の床面が見にくい状況であったと考えられるので、このことを考慮すると、原告の過失相殺は20%にとどめるのが相当である。
(6)後遺障害については、事実認定によれば1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すものとして後遺障害別等級表第12級7号に該当する後遺障害が残存したと認められ、本後遺障害は本件事故により生じたものと認めるのが相当である。
4.損害賠償額については、費用、逸失利益、慰謝料など13項目を計算合計の上、20%の過失相殺を行い被告に対して862万余円の支払いを求める限度で、原告の本訴請求を認容した。
5.本件事案について判例時報は次のようなコメントを付している。「安全配慮義務は、もともと使用者の雇用契約に付随する義務の一つと観念されていたが(中略)その適用範囲は広がり、労災事故、学校事故、その他の法律関係にも広く適用されるに至っている(判例時報2196号99ページ)」とコメントし、実務上参考になるものとして紹介すると述べている。
6.近年、チェーンストアのSCへのテナント出店は多く、本件のようなFF(ファーストフッド)タイプの店舗は、裁判所も指摘しているように十分な飲食スペースがないのがふつうで、SCの通路や共有スペースがこれにとって代わるようになることもある。顧客に対する安全配慮義務はSC側とテナントの双方に求められ、双方の役割分担も含め必要な対策を講じておくべきであろう。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の2196号
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