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判例 54
コンビニのクリーニングサービス代行業者に対し契約更新しなかった本部には、契約満了に伴う損失補填義務があるとされたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2192号より)
平成25年1月21日民33部判決、一部認容、一部棄却(控訴) 契約上の地位存在確認請求事件、東京地裁平22(ワ)26558号 コンビニエンス・ストアにおけるクリーニング取次サービス契約を契約期間満了時に更新しなかったコンビニエンス・ストア本部に対し、仕組みを共同開発した相手方当事者への契約終了に伴う損失補償義務があるとされた事例
この判例から学ぶ
1.原告Xは、被告Y(セブンイレブン)との間でクリーニング取次サービスを受託する契約を1年間の実験期間を経て平成17年6月の本契約締結後、自動更新条項により契約期間が当初2年、その後1年ごとに更新をおこなって来たが、Yは平成22年6月の契約期間満了をもって契約を更新する意志のないことをXに通知した。Yはその後、本契約の成果も利用しながら、ほぼ同じ仕組みにより別会社に委託して取次サービスを運営している。Xの請求は、主位的に@契約は更新を前提にしており契約期間満了の通知は無効で契約上の地位にあることの確認、A契約期間満了後もXが受け取るべきクリーニングサービス料の支払い、予備的にBYが契約を終了させたのは継続的契約に違反するので、債務不履行による損害賠償の支払いをYに求めたのが本件のあらましである。
2.契約によると、取次所の開設、ボックスの設置、会員の募集、店舗販促物の作成等はYの役割と費用と定められており、マーケティング費用(市場調査、店舗調査、レイアウト調査)、監督官庁及び組合折衝、クリーニング業者の信用調査と審査及び管理、ボックス、専用バック、各種帳票類、運用ツール等の企画、工場側オペレーションのマニュアル作成と実施指導、クレーム情報のシステム化と共有、統一品質基準書の作成と管理等は原告の役務と費用負担と定められている。サービスは1年間の試験期間後に5年間続いている。尚クリーニング料は、Yの店舗25%、Xが7%、クリーニング工場68%の割合で取得されることが合意された。
3.Xは、これは独自のビジネスモデルであること、Yとの契約は他の企業への提供を禁止する排他的契約であり継続性を要求されることなどを主張、YはX独自の企画立案でなく共同開発したもので、Yは既に率先して平成10年の時点で実施した実績もあることなどを主張した。裁判所の認定事実によると、6年後の契約満了時にはコンビニ本部の収支は赤字で構造的な不採算事業であった(判例時報2192号61ページ)。
4.裁判所が行った判断は次の通りである。
(1)Xが売上の7%の配分を受ける権利は、業務を行うことによる対価としての性質を有するもので、その意味で法律行為でない事務の委託(準委任契約、民法656条)に基づく受任者の報酬(民法648条)の性質を有すると評価できる。
(2)Xが行う事務の内容がコンビニチェーンに対する信頼の確保の基礎となる重要性を有すると評価できること、民法651条が委任における信頼関係の重要性を基礎として、委任は各当事者がいつでもその解除をすることができると定めている法理を踏まえ、かつ本契約には契約期間の定めと更新の定めがあり、3か月前の予告により更新しないことができるとしていることからすれば、Yは理由の有無にかかわらず期間満了による契約終了の通知をすることができると解するのが相当である。
(3)サービスの拠点としてコンビニ店舗を自らの支配下に置けないXは、一からの出直しとなることは避けられないが、YはこれまでのXの事務処理の成果も利用しながら、ほぼ同じ仕組みにより、現在、別会社に委託して「クリーニング倶楽部」を運営している。契約終了後における過去の成果の配分に著しい不平等が生じるときは、民法248条(償金請求権)が、付合・混和・加工によって損失を受けた者が、これにより所有権を取得した者に対して民法703条、704条の不当利得返還請求の規定に従い償金を請求することができると定めている法理、あるいは民法651条2項が、相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならないと定めている趣旨などに照らして、本契約を合理的に解釈することにより、Yは、共同開発してきた仕組みを使い続けることによって受ける利益の範囲内において、契約が更新されずに終了することによるXの損失を補償する義務があると解するのが相当である。
裁判所は、上記の償金額を直近1年間のクリーニング料の総額が246、872千円で、内Xの取得分(7%)は17、281千円と事実認定した上で下記のように算定した。
(4)Yが契約終了後も仕組みを使い続けることによって受ける利益は、価値が徐々に減少し契約終了の6年後には、その利用価値は全て失われるとみるのが相当である。その価値が減少する割合を6年間同じ割合(定額)とみると、Yが仕組みを使い続ける利益、すなわちこれによりXが被る損失の額は、契約終了時には、直近1年間のXに対する支払額の2分の1である年額8、640千円に相当する額であったものが6年後には0円になると見積もられ、6年間の平均をすれば、更にその半分の年額4、320千円(Xに対する年間支払い額の4分の1)となり6年分の積算合計は、25、921千円となる。したがって、YはXに対し、本契約の趣旨に基づき、契約に基づき出来上がった仕組みをセブンイレブン店で使い続けることによるYの利益相当額について、契約終了に伴う同額のXの損失の補償として、上記25、921千円をXへ支払うべきである。
(5)最後にXの請求のうち本契約を終了させた債務不履行による損害賠償請求については、Yに正当な理由や合理的な理由を必要とするものではなく、利益が上がらない実情からすればXとYに契約を継続させることを義務付けることも合理的とはいえないし、償金の支払いという代償措置を講じれば足りるとしてこれを棄却した。
以上が裁判所の判断である。
5.店舗においてクリーニング取次サービスのような新しいサービスを導入・提供する際には、上記2.に挙げたような多岐に亘る業務についての仕組みの構築とノウハウの確立、現場のオペレーションの確立、そしてテスト期間などを必要とする。本件は新しいサービス導入の難しさがよくわかる判例といえる。
6.判例時報は、本件の意義として次の括弧内のコメントを付けている。これも実務家には参考になるので全文紹介しておく。「本判決は、準委任契約としての性質を重視して契約期間と更新の定めに関する契約条項に従った契約終了通知を認める一方で、コンビニ店舗におけるサービス提供という契約の特性に照らした合理的な契約解釈という方法により、契約終了による損失補償義務を認めたものである。物の付合等の場合における償金支払い義務の法理を参照している点を含め、新規サービスの開発を巡る契約の終了に伴う契約当事者の利害の公平な調整を志向した判断として、参考になると思われる」(判例時報2192号54ページ)。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の2192号
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