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判例 53
テナントからの賃料減額の申入れは不動産取引の際の説明義務内容か
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2182号より)
平成24年11月26日民18部判決、棄却(確定) 損害賠償請求本訴、同反訴事件、東京地裁平23(ワ)14622号・31267号 賃貸用建物を所有者から一括して借り受け、テナントに転貸していた者が、当該建物及びその敷地の売買契約において、売主に代わって買主との交渉に当たった際、テナントから賃料減額の申入れを受けていたことを説明しなかったこと等について、説明義務違反を理由とする買主に対する不法行為責任が否定された事例
この判例から学ぶ
1.賃貸用土地建物の売買契約において、本件物件を所有者から一括して借り受け、これをテナントに転貸していた被告(Y)が、代理権を得て売主に代わって買主(X)との交渉に当たっていたところ、Yは過去にテナントから売上の減少を理由に賃料減額の申入れを受けていたこと、さらにテナントは、本件土地と公道との接触部分に存在する市有地の使用料を負担しており、Yに対してこれを負担するように申し出ていた等の本件土地建物の評価に影響する事実をXに告げず、さらにYはテナントの業績が好調であるなどと虚偽の事実をXに告げたこと等により、Xは客観的以上の価格で本件土地建物を購入し損害を蒙ったと主張し、説明義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償をYに求めたのが本件事案の概要である。
2.本件物件はショッピングセンターとして運営されており、信託銀行が受託者となり、信託受益権が設定されて物件の所有者がその信託受益権を保有、Yは信託銀行から一括して賃借した上で、これをテナント(ホームセンターと家具小売店の2社)に転貸していたが、売買契約の成立締結により、信託登記は抹消され買主(原告)への所有権移転登記がなされており、信託財産であることは本件では問題にはなっていない。原告は、不動産の賃貸、売買、仲介及び管理等を目的とする法人であり、被告も法人(宅建業者)である。尚、物件の所有者は売買交渉の場には登場していない。
3.裁判所は事実認定の後、売主の買主に対する説明義務について次のような一般論を述べている。「賃貸に供している不動産を賃借人が入居・使用する状態のままで売買の対象とする場合、その賃貸借契約の内容はもちろんのこと、賃借人の経済状態、賃料の滞納の有無、過去の賃料改定の経緯は、当該不動産をいかなる価格・条件で購入するかを決定する上で、重要な判断材料となり得るものであるから、このような情報について、売主が意図的に情報を隠ぺいしたりすることは詐欺に該当する場合もあり、それが意図的でない場合でも、正確な情報を提供しないことや不正確な情報を提供することによって買主の判断を誤らせるおそれがあり、そのことを売主が当然に認識すべき場合等、その作為・不作為が信義誠実の原則に著しく違反するときには、売主の行為は違法と評価され、不法行為責任を問われることもあり得る」と述べている。
4.しかしながら、上記を踏まえた上で裁判所は、YがXへ説明しなかったことは本件では不法行為責任を負うことにはならないとした。その理由は次の通りである。
(1)賃料減額の請求は複数回あったものの、賃料は据え置かれて支払いが続いていた。
(2)市有地の使用料の負担についても、契約で定められており賃貸人・所有者が負担すべき根拠もない。
(3)Yは、上の(1)と(2)に関する要請文書が掲載されたリストをXへ送付し、文書を持参する旨伝えX側で確認する機会を与えている。不動産取引や仲介について一定の知識・経験を有するXにあっては、これらを容易に知りその事実関係を確認できる機会も与えられていたと言うべきであり、X側でそのような対応をとったと思われない点も考慮に入れると、Yが信義誠実の原則に違反するとまではいい難い。
(4)重要事項説明の席に要請文書の原本が持参されたかどうかは、明らかではないにせよ、リスト記載の表題からその内容は推測がつきY側に直接問い正してしかるべきところ、X側ではこうした対応をとっていない点も考慮に入れれば、なおさら信義誠実の原則に違反するとは認め難い。
以上が裁判所の判断である。
5.次にYの反訴請求だが、裁判所は、上記3.で一般論として述べている通り、その説明内容については、売主、あるいは被告が責任を負う余地もあるのであり、本件売買契約に関して被告がした本件テナントに係る情報提供が万全なものとまでは言えないこと、賃料減額要請文書の存在に言及しなかったことについて、買主である原告が不満を抱いたとしてもあながち理由がないとまではいえないことを考慮に入れれば、本訴請求が法律的、事実的根拠を欠いたものであることを原告が知っていた、あるいは容易に知り得たものとみるのは相当でなく、本訴に係る訴えの提起は、結論において不法行為を構成しないというべきである、として反訴請求を退けている。
6.本件事案については、判例時報は次のようなコメントを付けている。「不動産取引における売主の負う説明義務の内容について判断した一事例として参考になろう。また、Y自身は売主ではないが、交渉への形態等から売主同様の責任を認めた点、売買の目的が信託受益権である場合につき、不動産を目的とする売買と同じ枠組みで判断している点でも事例的意義がある」(判例時報2182号、100ページ)とコメントしている。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の2182号
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