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判例 51
コンビニ加盟店が本部の近隣への競合店出店に疑問を感じ、本部の主要なフランチャイズ政策のありかたを問う訴訟を起こしたが、その一部が認められたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2133号より)
平成23年9月15日民1部判決、一部認容、一部棄却(控訴) 損害賠償請求事件、福岡地裁平20(ワ)1917号 コンビニエンスストアのフランチャイザーがフランチャイジーに対し、ディリー商品の販売価格を拘束したことにつき、独禁法違反の違法性があるとして、その損害額につき民訴法284条を適用して、フランチャイザーの損害賠償責任が認められた事例
この判例から学ぶ
1.原告(X、加盟店、個人)は、契約していたファミリーマートが平成8年3月頃原告の店舗の近隣に競合店を出店させたことから、その経営のあり方に疑問を感じ、同年10月被告(Y、セブンイレブン)と加盟交渉を始め、平成9年1月に契約を締結をした。そしてファミリーマートとは平成9年2月に合意解約を行い、同年4月にセブンイレブンの加盟店として開店した。その後、今度はセブンイレブンが原告店舗の近隣に4年間に3つの競合店舗(内1店は最短ルートで500m、徒歩10分圏内)を出店させたことで、原告は平成20年1月にセブンイレブンを閉店、被告が競合店を出店させたことが債務不履行及び不法行為にあたるなどとして、本部を相手取って訴訟を起こしたのが本件の概要である。
2.争点は5つあり原告と被告の主張は次の通りである。ここにはフランチャイズトラブルの典型的なやりとりが見られ、やや長文になるが、裁判所の判断を含め実務上参考になるので双方の主張を紹介する。
(争点1)被告は、競合店を出店させた(債務不履行及び不法行為)。
(原告の主張)本部には競合店を出店させないという信義則上の義務が存在する。原告はファミリーマート本部が近隣に出店したことから本部の経営のありかたに疑問を感じ被告と交渉をはじめたものであり、被告もこの経緯を知っており、被告の地区責任者は加盟店に無断で出店することはなく、出店させるときには必ず加盟店の承諾を得ると言っていた。原告の利益が94万3000円を下回るような競合店を出店させないという特約があった。競合店の出店により売上高が激減した。その要因はコンビニの収入源である酒、煙草の顧客を競合店に取られたこと以外に考えられない。被告は、売上減少要因には、商品の欠品や酒類販売免許規制の緩和、都市高速道路の閉鎖や歓楽街風俗店の一斉摘発がある、と主張するが関係ない。
(被告の主張)競合店を出店させないという義務があったことは否認する。原告との間でのみ月次固定費の金額を保証するために競合店を出店させない旨の合意をすることはあり得ない。競合店の出店により売上が減少したものではない。原告は本件店舗の商圏について、排他的、独占的権利を有するものではない。原告の店舗の閉鎖により、競合店側の売上と客数に影響はないから、商圏が重なっているとは言えず、売上減少との間には因果関係はない。原告は被告の経営カウンセリングを受け入れず、顧客のニーズに合った商品・サービスの積極的提供を行わず、商品の欠品や品切れを多く起こし、ディリー商品のクーポン値下げ等に対する顧客の信頼低下により、原告の店舗を魅力のない店舗にした。さらに商圏の変化による需要の激減も売上減少の要因である。
(争点2)被告は、ロイヤリティ算定方法について説明義務を怠った(債務不履行及び不法行為)。
(原告の主張)被告のロイヤリティ計算方式は独特のもので、被告方式は廃棄ロスや棚卸ロスの控除がロイヤリティを算定する際に許されていないことなど、その内容について被告は説明義務を負うところ、契約締結前、契約締結後営業開始前、営業開始後のいずれの段階においても説明や提示を受けたことがない。
(被告の主張)企業会計原則上では、被告方式及び原価方式のいずれの方式も認められる。原告がマニュアルに目を通していなかったとしても、原告は以前ファミリーマート店を経営していたし、開業後被告から毎月送られてくる損益計算書を見ていれば、営業費に廃棄ロス原価と棚卸ロス原価が含まれていることを容易に理解できたはずである。この二つに労務費を加えて加盟店オーナーが負担する三大経費であるところから、店舗の利益を増加させるためには、これを適正にすることが重要であること等を説明した。この三大経費はスクールトレーニングにおいても説明している。廃棄ロスと棚卸ロスのセブンイレブン店における平均量を提示していないが、加盟店オーナー候補者から要望があれば全店平均や日販別に実績を提示している。ロスを減らし商品在庫を適正にコントロールするため、仕入量の調整を図ることを説明、価格決定権が加盟店オーナーにあることでオーナー値下げ、販促値下げ等の方法も説明している。
(争点3)被告は、ディリー商品について再販売価格を拘束した(不法行為の成否)。
(原告の主張)被告は値下げ販売について、セブンイレブンイメージが低下する、周囲の店舗に迷惑が掛る、縮小均衡に陥る、機会ロスが発生するなど、何ら具体的根拠のない理由を挙げ、あるいは理由すら付けづに値下げ販売をさせない、とういう基本的姿勢を有していた。本件店舗の売上が減少傾向にあったことから、一部のディリー商品について販売期限到来直前に値下げ販売を行うことを本部に通告したところ、本部担当者が来店し、口頭で値下げ販売をやめるよう強く求められた。3時間後に販売期限が到来し破棄する商品のみ被告に損失を負担させないよう割引クーポンを付けて値引き販売を行ったところ、本部のOFCが継続的に来店して、値下げ販売をやめるように要求された。3割引の値下げ販売を行っても廃棄が一定量でるため、1円値下げ破棄を行ったところ、被告から間接的に契約解除をほのめかされた。被告のポスレジシステムは標準小売価格による販売を事実上強制していた。被告は、原告以外の加盟店に対しても値下げ販売しないように再販売価格を拘束していた。
(被告の主張)ディリー商品については、主力商品でありかつ利益を稼げる商品であるので、安易に値下げしないように、そして商品の廃棄ロスを防ぐには、発注精度の向上と販売力の強化が有効であることを原告に対してカウンセリングをおこなったもので、これは値下げ販売を禁止することとは次元が異なる。原告は少なくとも2年間割引きクーポンによる値引き販売を継続していたから、原告と被告の間で再販売価格の拘束が問題となる余地はない。通常価格で販売される商品と値下げ価格で販売される商品が並んであると、顧客に不信感を与えるし、近隣加盟店との間に価格競争が発生するので、被告の義務履行として原告にカウンセリングをおこなったものである。ポスレジシステムは手打ちもでき、加盟店に販売価格を強制する仕組みとなっていない。
(争点4)被告は、仕入先からの仕入れ代金に一定金額を上乗せした金額を原告から取得した(不当利得の成否)。
(原告の主張)被告が仕入先(酒類関係の一つ)に対して支払った金額は、原告が被告に対して支払った金額よりも明らかに少なくなっており、被告は仕入代金にその差額分を上乗せして原告に請求することにより、その差額を不当に利得した。
(被告の主張)原告が主張する差額は消費税相当分である。仕入先から被告への請求データは外税方式で消費税が記載されていないことから違いが生じており、被告に不当利得はない。
(争点5)原告の損害と被告の不当利得の額について。
(原告の主張)@商圏侵害による損害は、競合店舗出店の前年である平成16年の当期利益を基準として、平成17年から平成19年の当期利益の減少額は、それぞれ230万8955円、367万8115円、566万2943円である。よって、損害額は、合計1165万0010円である。
Aロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反及び再販売の拘束による損害は、これまでに原告に生じた廃棄ロス原価相当額×ロイヤリティ割合の計算式によって算出され、合計2627万9251円である。原告は、この一部である1000万円を請求する。
B仕入先からの仕入代金に上乗せした金額を請求したことによる不当利得は、当該期間に被告が仕入先に支払った金額と、原告が被告から仕入先に支払ったと説明を受けていた金額との差額は、254万6356円であるから、同額が被告の不当利得に当たる。
(被告の主張)@、A、Bのいずれも争う。
3.上記の争点に対する裁判所の判断は次の通りである。
(争点1)@被告が競合店を出店させたことが債務不履行ないし不法行為にあたるか;契約によると、セブンイレブン店の経営の許諾は、原告の店舗の存在する一定の地域を画し、原告に排他的、独占的権利を与えたり、固有の営業地盤を認めたりすることを意味するものではない。被告は、必要と考えるときはいつでも原告の店舗の所在する同一市・町・村・区内の適当な場所において、新たに別のセブンイレブン店の経営をさせることができると規定されているから、被告は、原告の承諾を得ることなく、原告の本件店舗と商圏が重なる地域に別のセブンイレブン店を出店させることができる。そうすると、競合店が本件店舗の商圏と一部重なり、本件店舗の売上が減少したとしても、そのことにより直ちに本件契約違反になるものではないし、また不法行為が成立するものではない。
A原告の利益が94万3000円を下回るような競合店を出店させないという特約の存在;この金額は、被告が契約前に原告に提出した資金計画書には記載されているが、全証拠を検討しても、競合店を出店させないことを了解したことを裏付ける客観的な証拠はない。よって、原告本人の供述は信用できず、これを前提とする原告の上記主張は採用できない。
B競合店出店による売上減少について;競合店の出店によって集客に大きな変動が生じたとは考え難く、本件店舗の平成17年以降の売上げの減少に影響したとしても限定的なものに過ぎない。認定事実によれば、売上は平成16年には低下傾向で、平成17年に売上が突然減少に転じたものではない。さらに酒類販売免許規制の緩和による酒類取扱店の増加、風俗店の撤退、他のチェーンの競合店の出店なども売上減少要因として考えられ、被告においてこれを予測することは困難であったというべきであるから、被告の上記行為が、原告との関係で信義則に反し違法であるということはできない。
C公共料金等の振込手続委託者数のの減少が売上減少につながっているか;商圏の丁目の分析統計手続きが実態を正確に表しているとは限らず、仮に因果関係があったとしても、原告の生活が困難になるほど影響を生じさせたとはいえない上、被告においてこれを予測することは困難であったというべきである。よって、被告の上記行為は直ちに債務不履行ないし不法行為を構成することになるわけでない。
上記の通り、被告が競合店を出店させたこよについて、被告に債務不履行及び不法行為はないとした。
(争点2)チャージの算定方法(被告方式)については、加盟店が負担するロイヤリティの額が高くなり、加盟店にとって不利な方式になっている。これは契約書から明確に読み取ることはできず、加盟店となろうとする者が自らこのことを理解するのは容易ではない。従って被告としては、被告方式が一般的な売上総利益の算定方式とは異なることについて、加盟店となろうとする者が理解できるように配慮する必要があるといえる。被告は、売上商品原価には廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれないことを明確に説明すべき義務を負うものというべきで、これに違反したものと認められる。被告は、本件契約書、説明用資料及びスクールトレーニングテキスト等を用いて説明したと言うが、被告の説明では説明義務を尽くしたとはならず、マニュアルも大部にわたり記載されているからといってこれも説明義務を尽くしたとはならず、被告の主張は採用できない。
上記の通り被告は、ロイヤリティ算定方法について説明義務を怠ったとしながらも、裁判所はこれがために原告が損害をこうむったとはいえない(争点5.@)と判断した。
(争点3)被告は、ディリー商品の値下げ販売は、セブンイレブンイメージを逸脱しているので、やめてもらいたいと発言を繰り返しており、被告はカウンセリングを行ったもので値下げ販売を禁止したものではないというが、上記主張は採用できない。被告は、原告に対して値下げ販売をやめるように指導することで、原告に対してその販売する商品の販売価格の自由な決定を拘束したものというべきであり、相手方とその取引の相手方との取引を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取り引きを行っているものと認められ、かつ、上記拘束条件が原告の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないと言えないことは明らかで、被告の上記行為に正当な理由があるということはできないから、「不公正な取引方法」13項の拘束条件付取引に該当する。以上のとおり、被告が原告に対して値下げ販売をやめるように指摘した行為は、拘束条件付取引という不公正な取引方法を用いたものというべきで、独占禁止法19条に違反するものと認められる。
上記の通り被告の行為は、「不公正な取引方法」13項の拘束条件付取引に該当し、独占禁止法19条に違犯すると断定した。
(争点4)全証拠を検討しても、平成14年3月から平成18年12月までの間、原告が被告に支払った仕入に係る金額と、被告が仕入先に支払った金額の差額に、利得していたことを認めるに足りる証拠はない。被告の主張するように、仕入先の請求書の金額には消費税が含まれておらず、それゆえ上記差額が生じたものとうかがわれる。よって、原告の主張を採用することはできない。
上記の通り被告には、仕入差額を不当に利得する事実はないとした。
(争点5)@ロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反による損害の有無;原告は、被告から被告方式について説明を受けていなかったことから、被告が廃棄ロスの負担を全く負わない仕組みであることを知らず、契約当初から廃棄ロスを減らすために値下げ販売を行う動機を形成し得なかったかのように主張する。だが本件契約上、原告は、廃棄ロス原価は原告が負担すべきものであり、これらを減らすことによって利益を上げられることができることを認識していた。ファミリーマートを経営していた際も、経費の削減については廃棄ロスを出さないように心掛けていた。不良品(廃棄ロス原価)については、契約書で原告が負担するものと定められ、それは仕方がない、と発言したこと等が認められる。三大営業費(人件費、廃棄ロス原価、棚卸ロス原価)についても、被告から説明を受け、自分の責任であることは認識していた。よって、被告のロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反によって、原告が値下げ販売を行うことができなかったために損害が発生した、ということはできない。
A商品の販売価格の拘束;原告は、被告による販売価格の拘束がなければ、より広範な値下げ販売によって廃棄ロスを減らすことができ、実際よりも利益を上げることができたものというべきであるから、原告には、その差額分について損害が発生しているといえる。だが損害の性質上その額を立証することは極めて困難であるというべきであるから、民事訴訟法248条()を適用し、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、原告の原価負担の減少分について、相当な損害額を認定することにする。そこで検討すると、原告が値下げ販売を開始しようとした平成16年12月から平成20年1月の閉店までの廃棄ロス原価(損益計算書の営業費の内訳科目である不良品の額)の合計額が107万684円であること、原告は平成17年1月以降、ディリー商品と考えられる弁当、おにぎり、サンドウイッチについて、クーポンによる値下げ販売を行っていたこと、販売額が原価未満となることもありうるが、なるべくこれを避けようとするのが通常であると考えられること、値下げ販売を継続的に行うと売上げの減少を招く可能性もあることなどを考慮し、原告の損害額を200万円であると認定するのが相当である。
注 民事訴訟法248条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
上記の通り被告は、ロイヤリティ算定方式に関して説明義務違反があったが、これにより原告は損害を被ったとはいえないとしたが、被告が原告の販売価格を拘束したことによって原告は損害をこうむったとし、その損害額を上記の通り認定した。
4.本件事案から学ぶ点は多い。テリトリー制をとらないフランチャイズにおいて、本部と加盟店との間の信頼関係が破壊されるきっかけは、本部が加盟店の近隣に競合店を出店させた際に起きやすい。そして本部の事前の適切な出店調整や説明が後手に回ったときの加盟店の本部に対する不信感は大きく、最悪の場合には訴訟に発展する。このような訴訟になると、加盟店は日頃の本部のフランチャイズ政策に対する不満や不信感を全て本部にぶっつけることになる。本件事案はこの典型であるように思える。
5.フランチャイズにおいては、どこの本部の出店政策も基本的には同じで、争点1.@において、裁判所が述べている通りである。さらに、商圏内の競合の影響調査は難しく、競合店の出店が近隣店舗に影響を及ぼす可能性があることも事実で、仮に因果関係があったとしても、原告の生活が困難になるほど影響を生じさせたとはいえない上、被告においてこれを予測することは困難であったというべきである、とBCで裁判所は触れているが、実務的にもこの通りである。
6.争点2.のロイヤリティの算定方法については、被告は説明義務を果たしていないと裁判所は判断したが、そのために原告は損害をこうむったわけではないとした。この被告方式については、計算方式と説明義務、そして加盟店の理解度をめぐる論争が現在までに数多く行われている( 参考→判例23)のでここでは省略する。
7.争点3.のディリー商品の値下げ販売の禁止については、被告の行為は独占禁止法19条に違反するとしている。平成14年4月に公正取引委員会から「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」という指針が発表されており、この線に沿って裁判所は判断したと思われる。だがここでの被告の主張に見られる通り、フランチャイズ政策の運営遂行上で本部として譲れない面もあることも事実である。
8.争点.4の仕入業者を介する被告の価格差額の不当利得の問題は、本件では仕入業者が1社で、裁判所の判断は明快である。だがコンビニフランチャイズに限らず、商品・物品類の本部一括仕入と加盟店 へのデリバリーに関して、加盟店が本部に対して抱く疑惑は、本件事案では被告の不当利得とされなかったが、争点1.のテリトリー制と並んで、頻繁にフランチャイズトラブルの対象になる問題である。
9.最後に一言、ファミリーマートと契約を結んでいた原告は、本部の出店政策に不信感を抱き、契約先をセブンイレブンに変更したのはいいが、再度同じ理由でセブンイレブンとトラブルをおこしている。契約日に注意してみると、先に新しい本部と契約調印を交わした後に、従前の本部と合意解約をおこなっており、不自然さがある。何か複雑な理由があったのだろうか、実務上こちらの方にも関心が向く。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2133号
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