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判例 49
「塾なのに家庭教師」は宣伝文句か商標的使用か
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2111号より)
平成22年11月25日民46部判決、棄却(確定) 商標権侵害差止等請求事件、東京地裁平20(ワ)34852号 被告が経営する学習塾の生徒募集及び従業員募集等の新聞折り込み広告及びウェブサイト上の広告に付した「塾なのに家庭教師」という文字商標について、広告の他の記載部分と相俟って、集団塾の長所と組み合わせた学習指導の役務を提供していることを端的に記述した宣伝文句であり、役務の出所を想起させるものではないとして、商標的使用該当性が否定された事例 ―塾なのに家庭教師事件判決
この判例から学ぶ
1.原告X(株式会社名学館)は、「名学館」の名称で直営とフランチャイズで全国展開する学習塾で、「塾なのに家庭教師!!」という文字からなる登録商標(本件登録商標、平成14年4月出願、指定役務は第41類学習塾における教授)を有している。被告Y(株式会社東京個別指導学院)は、「東京個別指導学院(略称TKG)」「関西個別指導学院」「京都個別指導学院」「東京個別指導学院名古屋校」などの名称で学習塾を直営している。Xは、Yが生徒募集や従業員募集等の新聞折込み広告やウェブサイトにおいて、「塾なのに家庭教師」というフレーズを使用することは、Xの商標権を侵害する旨主張し、主位的に被告各商標を付した広告の差し止め等と損害賠償を求め、予備的に仮にYが被告各標章について先使用権を有するとした場合、商標法32条2項(出所混同防止表示の付加の請求)に基づき、被告各標章の使用時に本件登録商標との混同を防ぐための表示をすることを求めたのに対し、Yは、被告各標章は個別指導塾の特徴を端的に表す表現として使用されており、特定の出所を表す標識と認識されるものではないから、商標的使用に該当しない旨等を反論し、争ったのが本件の概要である。
2.裁判所は、Yのウェブサイトを含むさまざまな広告にある「塾なのに家庭教師」の標章を検証した上で、Yによる被告各標章の使用が商標的使用に該当しないとしてYによる商標権侵害を否定し、その余の点について判断するまでもなくXの請求をいずれも棄却した。その認定と判断の内容は次の通りである。
 1.被告各標章の文字の色、大きさ、配置、位置関係、他の記載との関係などを見た場合、そこからは「じゅくなのにかていきょうし」の呼称が生じるものと認められる。これから「塾であるにもかかわらず家庭教師」のようであることを示す語であると理解することができる。しかしその具体的な態様ないし内容については、様々なものを想起し得るといえるから、これから直ちに一義的な特定の観念が生じるということはできない。
 2.被告は、個別指導学習塾の中で規模的には業界第2位であり、1位の塾がフランチャイズ中心であることを考慮に入れると売上的には首位にあると言ってよく、平成5年頃から「塾なのに家庭教師」の標章を付した3億枚を超える新聞折込みチラシを配布しており、これには被告が経営する東京個別指導学院の標章、その略称である「TKG」の標章が付されている。そして学習塾の業界関係者、生徒及びその保護者の間では著名なものとなっていることが認められる。
 3.被告チラシに接した生徒及びその保護者は、「塾なのに家庭教師」の語は集団塾の長所及び短所と家庭教師の長所及び短所を対比させた宣伝文であると認識し、その役務の出所については、チラシ下部に付された「東京個別指導学院」「TKG」「関西個別指導学院」「東京個別指導学院名古屋校」などから想起し、「塾なのに家庭教師」の語から想起するものではないことが認められる。
 4.そうすると、「塾なのに家庭教師」という被告各標章は、被告の役務の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられていると認めることはできない。このことはウェブサイト上の広告においても同じである。
 以上が裁判所の判断で、Xの請求をいずれも棄却した。
3.サービス業フランチャイズで使用するサービスマークつまり役務商標については、かって一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会がその登録制度化を強く主張し続け、平成4年4月から法制化された経緯がある。このフランチャイズが拠って立つ「商標」「ノウハウ」「パテント・ライセンス」等に関する法的保護の面で、協会の理論的なバックボーンとなったのは当時早稲田大学の教授であった土井輝生氏であった。その主張は氏の著作『フランチャイズ・システム』に詳しい。
4.本判決については判例時報は、「商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられていると言えない場合には、形式的には同法2条3項各号(標章の「使用」行為)に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は、商標の使用に当たらないと解され、そのような場合は商標権侵害に当たらないものとされる」、とコメントしていくつか関連した裁判例を挙げている。さらに「前記の裁判例の流れに一事例を加えるものとして参考になるものと考えられので、ここに紹介した」(判例時報2111号123ページ)、とコメントしている。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2111号
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