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判例 48
従業員が退社後に会社から競業避止合意違反を問われたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2105号より)
平成22年10月27日民5部判決、認容(控訴) 営業差止請求事件、東京地裁平22(ワ)10138号 会社の従業員が退職後3年間競合関係に立つ事業を自ら開業又は設立しない旨の合意をした場合について、合意に基づく会社の差止請求が認められた事例
この判例から学ぶ
1.会社の従業員が、勤務先で習得した技能・技術、ノウハウ、経営手法等を生かして退社して独立開業する際には、会社と交わした競合避止合意に違反しないように注意しなければならない。本件はフランチャイズに関する事案ではないが、フランチャイズ契約においては、加盟店側に必ず競業避止義務が課せられるので、競業避止義務に関する理解を深める意味でここで紹介したい。
2.原告X社は、話すためのヴォイスレーニングを専門的に行う教室を運営する会社である。被告(従業員Y)は平成18年5月にX社に雇用され、教室の講師として勤務していたところ、平成20年8月30日に競合避止合意の誓約書を提出してX社を退職し、同年8月に東京都内においてヴォイストレーニングを行う事業を開始した。そこでXは、Yの事業開始はXとYとの間の競業避止合意に違反するとし、Yに対して営業の差止めを求めたのが本件のあらましである。
3.これに対するYの反論は次の通りである。
(1)本件競業避止合意は公序良俗に反する。
(2)本件誓約書等は心理的強制によるものである。
(3)Yは、Xに損害を与えるような競業をしていないから、差止めの利益はない。
(4)本訴提起は下記の4つの点において権利の濫用に当たる。
@ Xの本件訴訟は、Yの退職後2年経過してYのホームページを見てからで時期が遅い。
A Xに損害が発生しておらず競業関係にない。
B 競業避止義務が退社後3年間は長い。
C Yの教室は個人事業で、Xの経営規模とは比較にならないほど小さく、Xにとって経済的な意味はなく、本件請求は形式的な書面を奇貨とするものである。
4.裁判所が事実認定をおこなった後に下した判断は、下記の通りである。
(1)本件競業避止合意は、その規定全体からみて、Xが授業のノウハウ、学校運営上のノウハウ、顧客に関する情報等の秘密情報を保有していることから、従業員に退職後も秘密情報の保持を誓約させ、秘密情報を保持することを目的とするものと解される。そしてヴォイストレーニングを行うための指導方法・指導内容及び集客方法・生徒管理体制についてのノウハウは、Xの代表者により長期間にわたって確立されたもので独自かつ有用性が高い。Yはヴォイストレーニングの講師の経験はなく、代表者から指導方法及び指導内容等についてのノウハウを伝授されており、Xはこれらノウハウを守る必要があり、本件競業避止合意はXのノウハウ等の秘密情報を守るためのものということができ、目的において正当である。退職後3年間の競業行為を禁止するのも、上記目的を達成するための必要かつ合理的な制限であると認められるので公序良俗に反しない。
(2)Yは、週1回のアルバイトで勤務している身としては、Xの代表者に逆らうことは考えられなかったと主張するが、退職の意思表示後に誓約書等への署名を求められ1か月後に署名し、2か月後に退職していることを考えると心理的強制があったとは信用できない。他にYが心理的に強制されたことを基礎付ける具体的な事実の主張及び立証もない。
(3)Yのヴォイストレーニングの教室の開業、インターネットホームページの開設などは、Xと競合関係に立つもので競業避止合意に反する。Yは差止め請求が認められるには、当該行為を放置しておくと回復し難い損害が生じるという事情をも、Xにおいて主張立証することを要すると主張する。しかし本件競業避止合意に反する競業行為が行われている以上、Xにおいて当該行為を放置しておくと回復し難い損害が生ずるという事情まで主張立証する必要はない。
(4)Yが主張する上記3.の(4)の@については、Yは退職後名古屋で結婚すると聞かされており都内で教室を開設するとは想定できなかったこと、Aについては、Xがノウハウを侵害される恐れがある以上、これを守るためには本件訴訟は正当な行為で、具体的な損害の発生まで立証する必要はなく、Bについては、Xのノウハウを守るためには長すぎるとは言えない。そしてCについてはXのノウハウを守るという目的を否定する事情にはならない。他に本件訴訟の提起が権利の濫用に当たることを基礎付ける事情の主張及び立証はない。
以上により裁判所は、被告は平成23年8月29日までの間、ホームページ及びブログ等を作成してウェブ上に公開することによって、Yが運営するヴォイストレーニング教室の宣伝、勧誘等の営業行為をしてならない、とした。
5.Yは入社時には、ヴォイストレーニングの講師としての経験がないので、Xは生徒に対する接し方や話すためのヴォイストレーニングの指導内容及び指導方法、接客方法、生徒管理体制等、講師として働く上で必要な事項を指導している。そしてXは、Yが退社する3か月前に正社員への登用を打診したところ、結婚が決まったと話しこれを断っている。退職時には競業避止義務以外にも、秘密保持、誠実な引き継ぎの実施、従業員や生徒の引きぬき行為の禁止などが記載された誓約書を提出している。裁判所はX社とその代表者に独自のノウハウがあったかどうかを詳細に認定しており、裁判所の判断の決め手は、ノウハウの有無とその伝授の方法、そしてそれを守る手立てであることが伺える。
6.競業避止義務は原則合法とされる。但し、事業の内容、期間、地域、職業選択の自由の拘束などの点において、類似性や解釈そしてその対応などに無理があると公序良俗違反とみなされる。原則合法であることは違法もありうることを意味し、あくまでも個々の案件と実態で判断されることに注意すべきであろう。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2105号
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