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判例 47
なぜ「喜多方ラーメン」は地域団体商標と認められないのか
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2111号より)
平成22年11月15日第2部判決、棄却(上告受理申立て) 審決取消請求事件、知的財産高裁平21(行ケ)10433号 地域団体商標として出願された商標「喜多方ラーメン」が周知性を欠くとした審決が維持された事例ー喜多方ラーメン地域団体商標事件知的財産高裁判決ー
この判例から学ぶ
1.域域団体商標の制度は、2006年4月1日から開始され、地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り、地域ブランドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として、いわゆる「地域ブランド」として用いられることが多い地域の名称及び商品ないし役務の名称からなる文字商標について、登録要件を緩和する趣旨に出たものであるが、地域団体商標の制度(商標法第7条の2第1項)では、「その商標が使用された結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」ことが登録要件の1つとして要求されている。
2.「喜多方ラーメン」とは、福島県喜多方市内に多数存在する蔵の見学を目当てにした観光客が徐々に増え始めてきた時期の後の昭和57年ころから、喜多方市が中心となって積極的に喜多方市内におけるラーメンの提供を宣伝・紹介したことにより、昭和60年代前半には、蔵の観光とともにラーメンを食べるために喜多方市を訪れる観光客が大幅に増加し、喜多方市は、「蔵のまち」、「ラーメンのまち」として、また、「喜多方ラーメン」は、「喜多方市内で提供されたラーメン」として全国的に広く知られるようになった(判例時報2111号117ページより)。
3.本件の原告は、福島県喜多方市に所在する同市内のラーメン店と製麺業者が加入する2005年に発足した協同組合である。2006年4月1日、特許庁に対し、商標法第7条2第1項の地域団体商標として、標準文字で「喜多方ラーメン」と記して、最終的には指定役務は第43類「福島県喜多方市におけるラーメンの提供」としての登録出願をしたが、特許庁から地域団体商標としての要件を具備しないとの理由で拒絶査定を受けたので、特許庁に対して不服審判請求をしたところ、特許庁から請求不成立の審決を受けたことから、原告が知的財産高裁へ審決の取消しを求めたのが、本件のあらましである。
4.原告主張の審決取消し事由は、地域団体商標について、(1)解釈の誤りと、(2)該当性の判断の誤りがある、というものである。原告主張の要点は次の通りである。
(1)についての原告の主張は、地域団体商標制度は、商標法第3条2項の周知性の登録要件を緩和した制度であって、一定の者の出所に係る商品又は役務であることを需要者が認識でき、地域ないし産地としての識別ができれば、地域団体商標制度でいう周知性の要件を充たすと解してよい、とするものである。
(2)については、喜多方市内のラーメン店のうちで原告の構成員が占める割合が50%弱であること等を理由に「本願商標は、これが使用をされた結果原告又はその構成員の業務に係る役務を表示するものとして、例えば、福島県及びその隣接県に及ぶ程度の需要者の間に広く認識されているものということはできない」とした審決の判断には誤りがある、と主張した。
以上が原告の審決取消しに関する主張内容である。
5.この原告の主張についての知的財産高裁の判断は次の通りである。
(1)については、この要件緩和は、識別力の程度(需要者の広がりないし範囲と、質的なものすなわち認知度)についてのものであり、当然のことながら、構成員の業務との結びつきでも足りるとした点において商標法第3条2項よりも登録が認められる範囲が広くなったのは別としても、後者の登録要件について、需要者(及び取引者)からの当該商標と特定の団体又はその構成員の業務に係る商品ないし役務との結びつきの認識の要件まで緩和したものでない。この登録要件は法律の解釈上導かれるものであり、立法経過や立法趣旨にも反するものではない。
(2)については、審決が判断するとおり、原告(その前身たる団体を含む)又はその構成員が「喜多方ラーメン」の表示ないし名称を使用し、喜多方市内においてラーメンの提供をおこなうとともに、指定役務「福島県喜多方市におけるラーメンの提供」に関する広告宣伝を積極的に行っていたとしても、喜多方市内のラーメン店の原告への加入状況や、原告の構成員でない者が喜多方市外で相当長期間にわたって「喜多方ラーメン」の表示ないし名称を含むラーメン店やラーメン店チェーンを展開・運営し、かつ「喜多方ラーメン」の文字を含む商標の登録を受けてこれを使用している点にもかんがみると、例えば福島県及びその隣接県に及ぶ程度の需要者の間において、本願商標が原告又はその構成員の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されているとまでいうことはできないというべきである。なお、喜多方市内の製麺業者によるラーメンの麺の販売実績等を考慮しても、この結論が左右されるものではない。
また、原告は、本願商標は、「喜多方」という一定の出所から流出した一定のラーメン「太く、縮れた麺及びさっぱりした味に特徴があるラーメン」を提供する役務を表示し、福島県及びその隣接県はおろか、あまねく日本全国津々浦々にいたるまで広く知られていると主張するが、原告の構成員である喜多方市内のラーメン店のうちにも、細麺やタンメン、味噌仕立ての濃厚なスープを看板メニューにする店舗があるなど、喜多方市内のラーメン店で提供されるラーメンにもある程度バリエーションがある。そうすると、原告が指摘する「喜多方ラーメン」の特徴から需要者及び取引者において、喜多方市内の特定の事業者あるいは原告を想起する蓋然性は必ずしも大きくはないというべきである。
したがって、いづれも審決の判断に誤りがあるとはいえないのであって、原告が主張する取消し事由には理由がないと判断し、原告の請求を棄却した。
6.原告以外に「喜多方ラーメン」の表示を利用するラーメン店やチェーン店が全国に多数存在することは需要者の間でもよく知られている。このことについて、被告(特許庁)は、反論のなかで次のように触れている。
雑誌等で紹介されたり、インターネットの人気店ランキングで上位を占める喜多方市内のラーメン店や、喜多方市内で提供されるラーメンの普及や上記ラーメンの知名度の向上に貢献したラーメン店や、喜多方市外でも知名度の高い喜多方市内のラーメン店には、原告の構成員でない店舗が含まれている。そうすると、原告店舗のみに本願商標の使用を独占させるときは、事業者相互間でも、需要者との間でも、混乱を生じるおそれがあるから、本願商標の登録は適切でない。
当該商標につき既に使用実績のある第三者が実際に先願使用権を有していることを立証するのは容易なものとは限らず、また、仮に、先使用権を立証できたとしても、その後、商標権者から出所混同防止のための表示を付す負担を強いられる恐れもある。出願人が責めを負うべき事由により、団体構成員となれず、かつ、地域団体商標の登録によって、先使用権を立証する以外には当該商標の使用の道を閉ざされる者が多数存在するような場合には、商標権者との利益の均衡を失する。そうすると、先使用権者による救済措置があるからといって、安易に地域団体商標の商標登録は認めるべきではない。
以上の被告(特許庁)の反論は、本判決を理解する手助けになるだろう。
7.本判決を判例時報は、地域団体商標の登録の可否に関して知的財産高裁が初めて判断した事例であり、また商標の使用状況等を総合的に勘案して商標法第7条の2第1項の周知性の有無につき判断したものであって、今後の実務の参考となると思われるので紹介する(判例時報2111号110ページ)、と述べている。
8.なおその後、原告は最高裁へ上告したが、最高裁で退けられ、2012年1月31日付敗訴が確定している。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2111号
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