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判例 45
本部の取締役に対する任務懈怠を理由とする加盟店からの損害賠償請求が認容されたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2101号より)
1審平成21年12月24日判決
2審平成22年8月25日民22部判決、変更(確定)
損害賠償請求控訴事件、1審東京地裁平20(ワ)20689号
2審東京高裁平22(ネ)596号
フランチャイザーの2名の取締役に対する任務懈怠を理由とするフランチャイジーの損害賠償請求が、判示の事実関係の下においては、各自についてそれぞれ代表取締役の職務遂行に対する監視義務を怠った任務懈怠が認められるとして、一部認容された事例
この判例から学ぶ
1.本件は控訴審で事案の概要は次の通りである。加盟店(X、Xの2名)が本部企業(A社)の情報提供義務違反等により多額の損害を被った(両店共に平成17年契約、翌年閉店)のは、当時のA社の取締役(Y、Yの2名)に、A社の代表取締役であったBの業務執行が適正に行われるよう監視すべき義務を怠った任務懈怠(かいたい)があったためであると主張して、旧商法(平成17年法律第87号による改正前の商法)266条ノ3第1項に基づき、Xらが、Yらに対し、被った損害の賠償を求めたのが本件の概要である。本件控訴審判決は、第1審判決を相当であるとしたが、Aの破産手続とBの再生手続により配当を受けた金額をXらの損害額から控除するのが相当であるとして、その限度で控訴審は第1審判決を変更している。
判決に至るまでの経過は次の通りである。
2.A社は飲食店の経営、フランチャイズチェーン店への経営指導、内装仕上げ工事業等をその目的とし、本件当時、三つの事業本部を有し、第二事業部において本件事業であるチーズケーキ店のフランチャイズ事業の開発運営をおこなっていた。本事業部を担当する取締役はいなく、代表者であるBが自ら本件事業を担当していた。
3.A社は平成17年春頃、本件事業を拡大するために、C社に商品供給期間の大幅な延長とその供給量の大幅な拡大を求めたが、契約の更新を断られた。そこで別の洋菓子製造業者からチーズケーキのOEM供給を受けることにし、取締役会で承認を得た。たが、Bは新たな供給業者の品質はC社のものより落ちることを承知していたものの、このことは、加盟予定者(この時点ではXらは未加盟であった)には何ら情報提供がなされなかった。この時のA社の第二事業部の業績も、直営店4店のうち3店、加盟店15店のうち7店が閉店しており、残った加盟店のうち月次売上が100万円以上の加盟店は2店にとどまっていた。
以上のような事実関係の中で、裁判所は、2名の取締役の任務懈怠による損害賠償責任と加盟店が被った損害とを次のように認めた。
4.取締役Yについては、A社を実質的に支配しており、Bとは、叔父と甥との関係で零細な家族企業における単なる員数合わせのための名目的な取締役でなく、業務執行のあり方について何度も問題提起する機会があったのに、何ら具体的な問題提起や提言をして来なかったから、取締役としての監視義務を重大な過失により怠ったとした。
5.取締役Yについては、A社に従業員として入社し、本件事業の内容と問題点を理解の上で平成17年春に取締役に就任し、抜本的な方針転換をBに迫ることは困難であったとは考えられるが、A社においてフランチャイジー募集を今後も続けていくかどうかについて、経済的合理的な判断に基づいてBに進言することは容易であったと言えるのに、そのような進言をしなかったばかりか、Bの提案に賛成したのであるから、重大な過失により取締役としての任務を怠ったと認めるのが相当であるとした。
6.加盟店X、Xの損害については、裁判所は、加盟金、開店準備費用を損害として認め、逸失利益として前勤務先を退職し、A社の加盟店にならなければ得られたであろう給与・賞与については、加盟店になるための退社年月日及びA社とのフランチャイズ契約との先後関係、他のフランチャイザーとの交渉の有無及び程度につき具体的な主張立証がない、としてこれを認めなかった。
7.本件事案は過失相殺がおこなわれている。加盟店においても独立起業する以上は、自己の経営判断について一定の責任を負うべきであることが指摘できるが、他方で被告の取締役の任務懈怠の程度が甚だ大きいので、総合判断して両原告が負担すべき損害割合も2割5分が相当であるとされた。
8.以上により、取締役Y、Yは、加盟店Xらが被った損害と同額の賠償を命じられたが、Yに対しては、その職務違反が認められる時期が、加盟店Xがフランチャイズ契約を締結した後であるため、加盟金を損害から控除されている点は注目に値する。この点については判例時報は次のようなコメントを付している(判例時報2101号133頁)「取締役の職責の重大さに鑑みれば(中略)A社の業績を認識して取締役に就任した以上、直ちにその改善を図るべきであったとして、Xらの主張するとおり、その時点に遡って職務懈怠を認めるべきではないかといった議論も予想されなくはないところであるが・・・」とコメントしている。フランチャイズの加盟交渉が長期に及ぶこと、閉店に伴う加盟店の損害が大きいことなどを考慮すると、加盟金だけを切り離しその授受時期を問題にすることには議論を呼ぶかもしれない。
9.判例時報は取締役の責任については次のように述べている「旧商法266条の規定する会社に対する責任、旧商法266条ノ3の規定する第三者に対する責任のいずれについても、商法の改正・会社法の制定に伴い、旧商法266条、266条ノ3の規定が廃止され、同旨の会社法423条、429条の規定が新設されることになった現在においても、その責任を追及する訴訟が頻発していて、裁判例もこれまでに数多くあるが、その背景には、取締役の責任が以前にも増して重視されている事情があるようである」(判例時報2101号132頁)「当該フランチャイズ事業がもっぱらフランチャイザーの代表取締役によって取り扱われていたため、取締役が当該代表取締役の職務の遂行に口を挟むのが躊躇されるような場合であったと窺われるが、そのような躊躇を理由に取締役の職務の遂行が免責される余地はなく、本判決がかねてA社の取締役であったYはもとより、A社の取締役に就任して間もないYについても、その職務懈怠を認めたのは当然に解されるところである」(133頁)と、厳しいコメントを付けている。
10.フランチャイズ事業においては、創業者がカリスマオーナー経営者として事業をとり仕切るケースが多く、他の取締役の役割が一段低く見られがちであるが、判例時報が指摘する点には、取締役の立場にある人達は注意すべきであろう。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2101号
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