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判例 44
18年間継続の販売代理店契約を4か月前の予告で解約したのは契約義務違反か
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2118号より)
平成22年7月30日民5部判決、一部認容・一部棄却(確定) 損害賠償請求事件、東京地裁平17(ワ)25703号 18年にわたって継続した販売代理店契約を4か月の予告期間をもって解約したのは契約上の義務違反であるとし、1年間の予告期間が相当であるとして、その間の損害の補償請求が認められた事例
この判例から学ぶ
1.本件の契約はフランチャイズ契約ではないが、販売代理店契約の成否を争っており、長期継続的契約を特徴とするフランチャイズ事業の参考になるのでここで取り上げた。原告(X、日本の販売代理店)は、被告(Y、オーストラリアのワイン会社)との間で、オーストラリアのワインを日本において独占的に輸入・販売することを内容とする販売代理店契約を締結し、18年間にわたりワインの取引を行なってきたが、平成17年1月に、YはXに対して同年4月末日限り代理店契約を解約する旨通告した。
2.そこで、Xはこの解約通知は、契約上の1年間の予告期間を設ける義務に違反すると共に、Xの日本における独占的な輸入販売権を侵害するものであって不法行為を構成すると主張し、Yに対して、債務不履行又は不法行為に基づき8,280万円の損害賠償を請求した。
3.ここでの争点は次の3つである。
争点1.本件販売代理店契約の成否。被告は、継続的な取引関係が存在しただけで、販売代理店契約は存在しないと主張。
争点2.債務不履行、不法行為の成否。18年間にわたる継続的契約であるから、解約するには少なくとも1年の予告期間を必要とする、と原告は主張。被告は、原告に対して販売業績への懸念を表明してきたが、このような販売業績への懸念表明は、解約告知の適法性の重要な事実であり、本件解約で設けた4か月の予告期間で十分であると反論。
争点3.原告の損害。1年分の利益相当額の損失を補償して本契約を解約すべきであり、被告は4か月分の予告期間しか設けなかったので、少なくとも8か月分の粗利益に相当する損害を被った。これは、原告が本件解約前に第三者に対して供給を約束した分については、本件解約後も被告は原告に供給を継続することに合意しており、これは年間粗利益の10%に相当する。そうすると、原告の損害は、当該ワインの輸入販売によって得ていた年間の粗利益額から10%を控除した額に12分の8を乗じた金額である8、280万円が損害になる、と原告は主張。被告はこれを否認し、損害額は純利益で計算すべきであると主張し、どんなに多くとも、原告全体の営業利益額に、原告全体の売上高に対する当該ワインの売上構成比を乗じた額を純利益額の上限とみなすべきである。これから上記の10%と4か月分を控除すると、その額は561万2,000円となり、原告の損害はこれを上回ることはない、と被告は主張。
これに対する裁判所の判断は次の通りである。
4.争点1.被告は、原告との間には契約書は存在しなく継続的な取引関係が存在しただけであると主張するが、以下の事実がある。
(1)
昭和62年に原告と被告は、当該ワインを日本に輸入して販売する合意をした。
(2)通算18年間にわたる取引実績がある。
(3)原告と被告は、日本における販売戦略について協議してきており、被告は出荷を拒否したこともなく、他の代理店を通じて日本において当該ワインを販売したこともない。
(4)本件解約の文書の中に「日本の販売代理店を変更することを決定した」等の記載がある。
上記の事実から、口頭による販売代理店契約が成立したと推認され、被告の主張は採用することができない。
5.争点2.(1)18年という長期にわたる取引関係を継続しており、その間原告は当該ワインの売上を大幅に伸ばしてきた等に照らせば、原告において将来にわたって被告のワインを継続的に提供されることは保護に値するものであるから、被告が本契約を解約するには、1年の予告期間を設けるか、その期間に相当する損失を補償すべき義務を負うものと解される。しかるに、被告が損失補償しないまま予告期間を4か月とし本件契約を解約したのは、本件販売代理店契約上の上記義務に違反するものであって、債務不履行にあたる。
(2)被告が本件解約の前に販売業績への懸念を表明したものの、販売代理店を変更する可能性を指摘したにとどまり、このことをもって本件販売代理店契約の終了を予告したとは言えないし、本件解約で設けた4か月の予告期間を正当化することはできない。
6.争点3.(1)被告は原告に、予告期間として相当な1年から上記4か月を差し引いた8か月分の売上に係る損害を与えたものと言うことができる。そして原告が被った損害は、総利益から販売直接費及び販売管理費を控除した営業利益の喪失分と解するのが相当である、
(2)上記(1)の額は590万4,000円になる。
(3)原告は、損害額は支出を避けられなかった経費を含む粗利益と主張するが、当該ワインの販売直接費が1本80円かかるとする原告の主張を裏付けるものもないし、他にいくらかかるか基礎付ける事情ないし証拠はない。販売管理費の支出についても4か月の予告期間が設けられていたことを考慮すると、抑制することが可能であったと考えられる。
(4)被告は、損害額の計算においては、原告の売上高に対する当該ワインの売上構成比を用いるのが相当であると主張するが、営業利益の算出に当たっては、原告の全体の総利益に占める当該ワインの総利益の割合を用いるのが最も直接的かつ合理的であるから、被告の上記主張は採用できない。
以上の通り裁判所は損害賠償額を590万4,000円と認容し、その余は失当であるとして棄却した。
7.損害賠償の計算方法については、煩雑であるが細かいやりとりがなされており参考になる。販売代理店契約の成否については、裁判所は口頭でも成立しているとし、長期にわたる当事者間の取引実績がなによりも契約の存在を証明しているとしている。これらの点は継続的取引であるフランチャイズ契約においてもあてはまるだろう。
尚、判例時報は本事例について次のようなコメント(以下の括弧内の部分)をつけている(判例時報2118号45頁)。「販売代理店契約のような継続的契約関係においては、下級裁判例では、代理店が多額の投資を行い、販売促進活動を実施したことなどを考慮し、@契約解約にあたっては相当の予告期間を設ける、A解約によって相手方の被る損失を補償するというような傾向がみられる(佐藤孝幸・実務契約法講義84、356参照)」。この点については、継続的取引を特徴とするフランチャイズ契約の解約時においても十分に注意すべき点であろう。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2118号
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