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判例 43
無断で3日間を超えて店舗休業すると賃貸借契約を解除する旨の特約は有効か
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2110号より)
平成22年10月28日民31部判決、本訴棄却、反訴一部認容・一部棄却(確定) 保証金返還本訴請求、損害賠償反訴請求事件、東京地裁平21(ワ)600号・16991号 店舗用建物の賃貸借契約上の、連続3日間を超えて建物における営業を休業するときは、予め賃貸人に対し書面で申入れをし、賃貸人の承諾を得なければならず、賃借人がこれに反したときは、賃貸人は通知催告することなく契約を解除することができる旨の特約違反の債務不履行責任が肯定され、賃料相当額等の損害賠償が認められた事例
この判例から学ぶ
1.5階建て商業テナントビルの1階に入店していた家電量販店(原告X、本訴原告、反訴被告)が、不動産賃貸業等を営むY社(本訴被告、反訴原告)に対して賃貸借契約解除に伴う明け渡しが終了したとして、保証金残額及び敷金の返還等を請求する本訴を提起した。これに対して、YはXがYの承諾なくして店舗を閉店したことによりYは契約解除するに至ったとして、債務不履行による損害賠償請求権と保証金及び敷金の各返還債務とを対等額で相殺した残額を反訴として請求した事案である(反訴額請求合計約3億1200万円)。
2.本件建物は、今後の発展が見込まれるニュータウンへの出店で、Xを含むテナントと数次にわたり協議を経た上で、Yがテナントの意向を聞いて建築した事務所、ショールーム、小売店舗、飲食店舗、スポーツ施設及び駐車場からなる商業テナントビルである。主なテナントは、1階が原告店舗、2・3階が大型家具店ショ−ルーム、5階がスポーツクラブである。
3.XはYとの間で平成9年11月に期間20年間の貸借契約を締結したが、平成20年9月に赤字が看過できなくなり閉店した。途中平成17年11月に訴訟和解の結果、賃料の増額幅の引き下げが行なわれている。Xが閉店の止む無きに至った経過は次の通りである。
4.本件店舗の周辺人口は契約当初に予想していたほどには増加せず、本件店舗の収支は毎年1億円から1億5000万円の赤字であり、累積で15億円を超える赤字を出していたため原告は、平成17年10月全面改装を行なったが、収益は改善しなかった。さらに、周辺へ業界上位の競合他社2社の出店予定が明らかになったことで営業継続は難しくなり、原告は被告に他業種の3社を新賃借人として紹介し、一時休業を承諾することを求めたが、承諾を得られず事前申し入れの上で閉店した。
5.以上の経過の中で、原告が特約に違反したとする判決理由は次の通りである。
・本件商業テナントビルは、被告が原告を含む賃借人らと数次にわたる協議を経て、原告ら賃借人の意向を聞いて建築した建物であること。
・そのため、原告は他の賃借人と協力し、本件建物の運営発展に努めること、原告の本件建物の使用目的が店舗等に限定されること、模様替え工事についても休業を伴う場合には被告の承諾が必要であること、3日以上の休業についても被告の承諾が必要であること、被告が相当と認める賃借人が見つからない限り、賃貸借期間中であれ、原告からの解約申入れはできないこと、及び原告が無断で本件建物から退去したとき又は正当な理由なく6か月以上本件建物を使用しないときは、被告は催告なく本件契約を解除することができることなどが、特約として認められる。
・これらは、原告と被告が、異なった業種の賃借人が入って相互に本件建物全体としての客の入りを向上させることを前提として本件契約を締結し、これを担保するために定められたものである。したがって、被告の承諾なく本件店舗を閉店することは特約に反する。
・本件契約は、対等な企業間で将来の収支を計算した上で締結されたものであり、原告にも一定の方法による契約関係からの離脱が認められていないわけではないので、公序良俗に反するものとはいえない。
・原告は被告に3社の新賃借人を紹介したところ、被告の承諾が得られなかったのは、テナントとしてふさわしくない、入店済みテナントとの間で競業関係が発生する、企業規模が小さいなどの理由によるもので、被告が正当な理由なく承認しなかったものとはいえず、原告の店舗が赤字であったことを考慮しても、原告が被告の承諾なく閉店したことにつき帰責事由がなかったということはできない。
・原告の店舗は1階に位置し、仮に閉店した方が転貸先を見つけやすいとしても、他のテナントへの影響が大きく、閉店することが正当化されるわけではない。
以上が、原告の行為が特約に反するとされた理由である。
6.被告の損害については、裁判所は原告の店舗閉鎖から賃貸借契約期間満了までに得られたであろう賃料を逸失利益とし、これから保証金と敷金を相殺した額を被告の損害とみなした。尚、共益費は得べかりし利益とはいえず、損害とは認められてはいない。
7.原告は、市場環境が見込み通りでない中で、賃料引き下げ交渉や店舗全面改装を行ない、さらに競合店の出店情報もあり、退店の意図を固め、転貸先3店舗を被告に紹介するなどの努力を行なっているが、店舗が1階に位置し休業することは他のテナントへ与える影響は大きく、賃貸借契約の特約に抵触することになったのは不幸なことと言えよう。原告の店舗がビルの上層階にあったとするならば、原告、被告共に時を稼ぎ有効な手を打つことができたかもしれない。この裁判例は判例時報も指摘しているが、実務を担当する者には大変参考になるだろう。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2110号
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