フランチャイズ情報提供サイト

フランチャイズ情報提供サイト
 ←トップページへ戻る
←判例研究索引へ戻る
 判例 41
滞留ロイヤリティの支払請求訴訟で、加盟店が滞留の原因は誤った売上予測を提供し適切な経営指導をしなかった本部にあると争ったケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2088号より)
平成22年5月27日民23部判決、第一事件認容、第二事件棄却(控訴) ロイヤリティ等請求、損害賠償請求事件、大阪地裁平20(ワ)661号(第一事件)・4973号(第二事件) 高齢者向け弁当宅配事業フランチャイズ契約において、フランチャイズ・チェーン運営者の情報提供義務・経営指導義務の違反が認められなかった事例
この判例から学ぶ
1.原告(X、本部)は、店舗数120店の規模の高齢者向け弁当宅配事業のフランチャイズ本部である。平成15年8月に被告(Y、加盟店)とFC契約を締結したが、加盟店が毎月のロイヤリティ等の支払いを怠ったので、4年後(平成19年9月)に契約を解除し、未払いロイヤリティ等(額にして512万円)の支払いを求め、さらにYに契約終了後の競合避止義務違反があるとして営業の停止を求めたところ(第一事件)、Yは、ロイヤリティ等が滞った原因は、Xが誤った売上予測を提供し、適切な経営指導をしなかったことにあるとし、Xに債務不履行に基づく損害賠償を請求をした(第二事件)。
2.本件の争点は6つ有り、やや長くなるが参考になるので、各争点における原告と被告双方の主張と反論の要点を下記に紹介したい。
第一事件
争点1.原告のロイヤリティ等の請求は権利濫用か
被告;被告の債務は、下記第二事件争点3と争点5の通り、原告の被告に対する情報提供義務違反その他の債務不履行が原因として発生したものであるから、請求は信義誠実の原則に反し、権利の濫用として許されない。
原告;第二事件の主張の通り、情報提供義務違反は無いし、店舗運営をするための指導や援助を行なってきた。
争点2.被告の競業避止義務違反の有無
原告;被告が契約解除後も運営するウェブサイトは、ページの利用方法やリンクなど、原告の商標の集客力を今も利用して事業を行なっている可能性を否定できない。
被告;競業制限の内容は、期間5年と長期であり、対象者が被告の関係者と広範囲で、区域の定めがなく、出資や従事まで禁止しているので、営業の自由を不当に制限し公序良俗に反し無効である。
第二事件
争点3.原告の情報提供義務違反の有無
被告;原告から提供を受けた市場調査結果報告書、開業計画書、経験則上のデータ、オーナー募集の案内パンフレットなどは、出店可能ランク、売上予測、収支の予想などの点で、原告が提供する役務の内容が、実際のものより著しく優良であると誤認させるものであって、欺瞞的顧客誘引取引に該当するものである。
原告;出店ランク付けは、9年間の事業経験によるものである。高齢者配食事業は、オーナーの営業力が売上を大きく左右することから、本部が売上予測や利益予測を行なうことは不可能で、それらの予測は行なっていない。本件開業計画書は、国民生活金融公庫からの借入をするためのひな形である。パンフレットの収支予想は収支のバランスを予想したもので、被告の事業は、他店にない「その他」の支出項目が高額すぎるから帳簿上利益がでなくとも当然である。
争点4.原告の適正なエリア設定義務違反の有無
被告;当該エリアーは世間では東西に分けるのが一般的で、FC契約5条でエリアが限定されているところ、土地勘のある希望エリアが与えられず、余った南エリアを押しつけられた疑いが濃厚である。
原告;市場を東西に分けるか、南北に分けるかについては議論はなかった。被告は南エリアで出店することについて好意的な意見を述べていた。原告の提案は十分な合理性と当事者の合意に基づくものである。
争点5.原告の経営指導義務違反の有無
被告;予測を下回る売上で原告のスーパーバイザーに相談したところ、「経営のことはわからないないので、税理士など専門の人に相談してくれ」という回答であった。食材費の支払いができない状況に陥ったときは、原告は「食数を増やせ」と繰り返すのみで、原告に何度も援助を求めたが「売上高を上げればよい」と指示するだけで何ら有効な手段を講じることはなかった。配達エリアの拡大による人件費その他諸経費の増加に対する対策を求めたが無視された。これらは原告の経営指導義務違反である。
原告;被告支援のため原告担当者6名を派遣し、被告エリア内の事務所等に対し営業活動を行なったが、本件店舗を認知していない事業所が複数あり、被告は自らの営業不足を認める発言をしていた。また、被告の経営が赤字になったのは、新規顧客開拓の営業を怠ったこと、原告の指導に従わず効率の悪い配送を続けたためで、適切な経費管理を行なわなかったことが原因である。
争点6.被告の損害
被告;原告の情報提供義務と経営指導義務の違反に係る債務不履行により次の損害を被った。加盟金、店舗賃貸借関係費用、店舗内外装費用、什器備品の代金、店舗の賃料、ロイヤリティ、金融機関に支払った利息、逸失利益、慰謝料、弁護士費用。(金額は省略)
原告;仮に、原告に情報提供義務違反等の責任があるとしても、原告の義務違反と被告の損害との間には相当因果関係はない。
3.事実認定をおこなった結果の裁判所の判断は次の通りである。
第二事件について
争点3.原告の情報提供義務違反の有無について
売上予測については、明確な予測として示されたものではなく、被告が営業努力によって顧客を獲得することを前提とした説明であったことがうかがわれる。実績を見ると原告のいう売上を上げた時期もあり、収入が得られていないのは被告の経営の仕方に由来するもので、原告の売上予測が誤りであった根拠にはならない。
市場調査結果報告書の記載内容については、将来の市の委託業者への参入の可能性など顧客獲得に一定の合理性があり、実際に相当程度の顧客を獲得して売上をあげていたので、原告の判断に誤りがあったとはいえない。
募集案内パンフレットについては、顧客の依頼で現地の収支予想などを行なうことができる、となっているところ、被告は調査を依頼したことがなかったから、本件パンフレットがFC契約を締結する意思決定に何らかの影響を与えたものとはいえない。
以上によれば、原告に情報提供義務違反があったと認めることはできない。
争点4.原告の適正なエリア設定義務違反の有無について
世間では当該エリアーを東西に分けるケースが多いとしても、原告が宅配弁当事業の市場を南北に分けるのが不合理であるということはできない。被告が主張する原告の適正なエリア設定義務違反については、そもそも前提を欠くもので理由がない。
争点5.原告の経営指導義務違反の有無について
原告は被告へメニューやレシピを提供、コンピュータシステムを開発提供し、加盟店同士がインターネット上で情報交換できるようにし、業務全般に関するマニュアルも提供している。自ら被告店舗エリア内の福祉関連施設を回って営業活動をしたことも認められる。人件費の効率化についても、配送ルート上の顧客開拓など、被告に対しアドバイスし、経営のことは専門家に相談するようにという原告のアドバイスも、指導助言の一つである。
そうすると、原告はFC契約に基づく指導援助義務を一応履行したというべきで、被告が主張する原告の経営指導義務違反があったものとは認められない。
以上のとおりであるから、被告が主張するFC契約における原告の債務不履行は認められず、したがって、第二事件における被告の原告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。
第一事件について
争点1.(原告のロイヤリティ等の請求が権利濫用等に当たるか)について
上記第二事件で検討したところによれば、原告の債務不履行の事実は認めらられず、原告の被告に対するロイヤリティ等の請求が信義則に反するとか、権利濫用に当たるということはできないから、被告の上記主張は採用できない。
争点2.(被告の競業避止義務違反の有無)について
競業避止特約は公序良俗に反して無効になる場合があるが、本件FC契約における競業避止特約が、契約終了後において加盟店に機密保持義務を課し、原告の経営ノウハウの保護を目的としているものと解されるところ、期間5年、対象者を加盟者及びその関係者としており、業種の限定があり、原告の本件請求においては県内と区域が限定されており、違反した場合における違約金の定めもないことから、同特約は加盟店の営業の自由を不当に制限するものとはいえず、公序良俗に違反するものではないというべきである。
被告は、契約終了後、本件店舗と同一の場所において弁当屋を営み、メニューも酷似しており、価格もほぼ同一であることから、被告は原告と同一の事業を行なっているものと認められる。
被告はエコ商品の販売や高齢者以外への配食をおこなっているとしても、原告は被告に対して業務全般に関するマニュアルを交付する等しており、原告が被告に提供したメニュー(レシピ)を使用しないからといって競業行為に該当しないものでもない。よって被告の上記主張は採用できない。
したがって本件FC契約終了後の5年間、高齢者向け在宅配食サービス事業を自ら経営し、同事業をフランチャイズ・システム、営業委託、のれん分けその他の方法を用いて第三者をして経営させてはならない。
以上のとおり、原告の請求は理由があるからこれをいずれも認容し、被告の請求は理由がないからこれを棄却する、というのが裁判所の結論である。
4.ロイヤリティ等の滞留をめぐるトラブルは、本件に見るように契約締結前の加盟交渉までさかのぼり、争点が非常に多岐にわたる特徴を持つ。ロイヤリティがフランチャイズ契約のかなめをなし、本部と加盟店との継続的取引から発生する対価であることを考えれば当然のことであろう。フランチャイズ契約をめぐる紛争は、一度起こると当事者双方は、契約条項全てにわたり権利の行使と義務の遵守を主張し反論し合うことになるので、普段から信義則に則り契約を遵守し、証拠となる書類や帳票は保管しておく心構えが欲しい。
5.一般的にロイヤリティ等の支払いが多額に滞留する原因の一つに、加盟店が経営する兼業部門への無断資金転用がある。本事案では、被告の事業は他店にない「その他」の支出項目が高額すぎるから帳簿上利益がでなくとも当然である、という原告の主張があるが、裁判所は、経営のことは専門家に相談するように、という原告がおこなったアドバイスも指導助言の一つである、と簡単にとらえているがそれで良かったであろうか。滞留ロイヤリティの額を考えると、本部は加盟店に対する経営指導の面で、突っ込みが不足していたようにも思える。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2088号
←トップページへ戻る←判例研究索引へ戻る↑このページの先頭へ戻る