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 判例 40
本部のブランド価値維持義務違反に対して加盟店が損害賠償請求を行なったケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2095号より)
平成22年7月14日民24部判決、棄却(確定) 損害賠償請求事件、東京地裁平21(ワ)873号 洋菓子チェーン・フランチャイズ事業のフランチャイザーが消費期限切れ原料使用問題を引き起こした場合について、ブランド価値維持義務違反が認められたものの、損害との因果関係が否定された事例
この判例から学ぶ
1.平成19年1月10日に被告(Y、本部)が、消費期限切れの原料を製品に使用していることがマスコミに報道されて食品安全衛生管理に関する問題(本件問題)を問われたことで、Yは、原告(X、加盟店)に対し、1月11日から同年4月10日までの3ヶ月間の営業停止を要請し、さらに前年同期の売上の36%に相当する休業補償金を支払った。しかしながら、Xは、前記休業補償期間経過後も、営業を再開せず、新オーナーの募集をするとともに、Yにさらなる休業補償金の支払いを求めたが、Yが拒絶するなど紛争になり、Xは従業員などの退職もあり、本件FC店を廃業し、同年7月末、他の業種の店へ店舗を賃貸し、Yは同年9月11日付けで本件フランチャイズ契約を解除した。尚、XがYとフランチャイズ契約を締結したのは、本件問題が起こる3年4か月前の平成15年9月3日(開店は10月3日)で、3ヶ年間の営業実績があるが毎年赤字営業であった。
2.上記のような経過の中で、XはYに対して店舗工事費、営業停止に伴う損害、加盟料等の賠償を求める本訴を提起した。Xが主張した内容は次の通りである。
(1)主意的に、@Yが消費者の信頼、信用保持の資質を有していなかったにもかかわらず、その実態を秘してフランチャイズ契約を締結したことは詐欺による不法行為に当たり、A衛生管理、品質管理の適正を客観的に担保する社内体制を確立していない事実を故意または過失により説明を怠ったことは、契約締結上の情報提供義務に違反する。
(2)予備的に、加盟店が本部の有する信用、名声を利用することができることはフランチャイズ契約の本質であるところ、Yはそうしたブランド価値維持義務に違反した。
3.これに対する裁判所の判断は次の通りである。
(1)主意的請求のYの詐欺的行為・契約締結上の保護義務違反については、
@Xは、Yが「食品安全衛生面における消費者の信頼確保の体制」「消費者の信頼、信用保持の資質」「衛生管理、品質管理の適正さを客観的に担保する社内体制」をFC契約締結時に備えていなかった、と主張するが、Yがどのような点においてその最低水準を備え満たしていなかったのかを具体的に述べるものではなく、主張自体として失当というほかはない。
A確かに、平成15年9月3日のFC契約締結時においても、既に本件事件と同じ事例が数件存在していたことがうかがわれるが、食品衛生の専門家等の外部者で組織される「信頼回復対策会議」が作成した本件事件の最終報告書(甲23)によると、Yがフランチャイザーとして当然そなえているべき最低限の安全衛生管理体制や消費者の信頼保持の資質を欠いていた、とまで認めることはできない。
上記の理由により、Xの主意的請求は排斥された。
(2)予備的請求のYのブランド価値維持義務違反については、
@本件フランチャイズ契約上は、YはXに対してその使用を許諾した商標、サービス・マーク等のブランド価値を自ら損なうことのないようにすべき信義則上の義務を負うものというべきである。
Aさらに、本件フランチャイズ契約21条(即時解約)、同22条(予告による解約)によると、XのみならずYも当該洋菓子チェーン・フランチャイズシステムの信用・名誉・のれんを傷つける行為をしてはならないとの契約上の義務を負っているものと解すべきである。
B同23条(損害賠償額の予定)では、Yの信用が毀損された場合の損害賠償額の予定のみを定めているが、しかしYが当該洋菓子チェーン・フランチャイズシステムの信用・名誉・のれんを傷つけることによってXに生じた損害についての損害賠償が免除されるものと解することはできない。
C争いのない事実及び認定事実によると、本件問題によりYはブランド価値を自ら損なわないようにすべき義務に違反したものと認められる。したがって、YはXに対し、上記義務違反により生じた損害を賠償すべきである。
上記の理由により、裁判所はYのブランド価値維持義務違反を認めた。
4.それでは、Yのブランド価値維持義務違反行為と、Xが主張する各損害との因果関係についての裁判所の判断はどうであろうか。それは次の通りである。
@Yの店舗開店(平成15年9月3日フランチャイズ契約締結、10月3日開店)後、Yの店舗は、本件休業開始(平成19年1月11日)までの3営業年度のいずれも赤字であった上、本件休業期間終了後も、一度も営業を再開することなく店舗の営業をやめたというのであるから、本件問題により店舗の売上が低下し、そのために廃業に追い込まれたとういうものでないことは明らかである。
AさらにXは、店舗の従業員が休業により退職したために、営業再開ができなっかたと主張するが、Yは3ヶ月の休業補償金の支払いを1週間ごとにおこなっているので、従業員の退職は、Xが従業員への給与の支払いを行なわなかったことにあるものというべきである。
したがって、Yのブランド価値維持義務違反行為と、X主張の各損害との間に因果関係があるということはできない、というのが裁判所の判断で、Xの請求それ自体は棄却された。
5.フランチャイズ事業が成り立つ最大の要因は、本部が所有し、加盟店が使用許諾を受けるそのブランド価値にある。従って、本部はブランド価値の維持のために最大の努力を払うものである。だがこのことは、本部の義務として、一言もフランチャイズ契約書には明記されていない。逆に加盟店の義務として詳細に記載される。損害賠償の予約についても同様である。これはフランチャイズ契約書の特徴といえるだろう。本件事案において裁判所が、本部がブランド価値維持義務違反から逃れられないとした理由はここにある。
6.本部が加盟店へ支払った3ヶ月の休業補償金(粗利益率36%)の支払いは、POSデータを元に週間単位で行なわれている。加盟店のオーナーの生活費や従業員への給与の支払いなど考えると、この本部がとった措置は正しく、裁判においても本部に有利に働いている。
7.判決は、本件問題については、、弁護士、公認会計士、食品衛生の専門家等の外部者で組織される「信頼回復対策会議」が作成した最終報告書が、本件問題に関するマスコミ報道には、法令の理解不足、誤解などによる多くの問題があったこと、本部が消費期限切れの原料使用の事実を隠ぺいすることにしたとの印象を与え、本部に対する激しい非難を生じさせることとなり、また本部がマスコミ側の法令の誤解を正そうとせず、反省、謝罪に終始したことにより、マスコミのバッシング報道を一層過熱させたことなどを指摘している、と述べている。そして、本部がフランチャイザーの資質に欠ける、とまでは裁判所は判断していないのは、本部にとっては救いであろう。本件事案は、ブランド価値維持のための日頃の危機管理対策の重要性を本部に教えてくれている。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2095号
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