フランチャイズ情報提供サイト

フランチャイズ情報提供サイト
 ←トップページへ戻る
←判例研究索引へ戻る
判例 38
加盟店の契約終了後の営業継続が競業避止義務違反とされたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2080号より)
平22年1月25日民18部判決、一部認容、一部棄却(控訴) 営業差止等請求事件、大阪地裁平21(ワ)1865号 弁当宅配業のフランチャイジーにフランチャイザーに対するフランチャイズ契約終了後の競業避止義務違反があるとして、フランチャイザーのフランチャイジーに対する同一市内における3年間の同種業務の差止め及びロイヤリティ相当額の36か月分の約定損害金支払の請求が認容された事例
この判例から学ぶ
1.フランチャイズ・トラブルの中でも、契約終了後の競業避止義務違反をめぐるトラブルは多い。本件事案は、フランチャイズ契約において、なぜ競業避止義務規定が設けられているか、理解の助けになるので長文になるがここでとりあげた。
2.フランチャイズ契約終了後に、本部が競業避止義務を加盟店に課すことは原則有効とされている。その理由は、商標の保護、経営ノウハウ・営業秘密の保護、営業の混同の防止、ただ乗りの防止などにあるが、拘束する期間、地域、類似の業種、職業選択の自由などの点において、本部が優越的地位を濫用し拘束すると、公序良俗に反して無効となる場合もある。
3.本件の加盟店(被告Yら、連帯保証人を含む)は、弁当宅配事業チェーンの加盟店である。平成12年9月に加盟契約を締結し、5年後に更新、更新3年後に契約期限が到来したので自ら契約解消を申し出て、屋号を変えて営業を継続したことに対して、本部(原告X)から競業避止義務違反の訴訟を起こされたものである。
4.これに対して、加盟店(Y)が、競業避止義務規定が無効であり合理性を欠くと本部(X)に対して主張した点は次の通りである。
(1)契約期間中、Xから経営ノウハウを伝授してもらったことはない。従ってXには保護される営業秘密はない。さらに、Xは顧客獲得に関与していない。従ってXには競業避止義務によって保護される利益がないので、競業避止義務規定には合理性がない。
(2)本件の競業避止義務規定は、Yに次のような過大な不利益をもたらすので合理性を欠く。
@営業禁止地域を限定していないので、営業の自由を制約する。
A被告は60才で転業転職が困難である。
B店舗は賃借物件で営業が継続できなくなると、賃借権の価値がなくなる。
(3)YはXに次のような債務不履行があったためにフランチャイズ契約の更新を拒絶したものであり、競業避止義務を課するのは、当事者間の公平を害し、合理性を欠くというべきである。
@初期研修、スーパーバイザーの巡回頻度、宣伝活動などの面において、本部に経営ノウハウの提供義務及び経営の指導援助義務の不履行があった。
A契約上本部からの商品購入義務があったが、破損している食材や輸送中の温度管理不備による品質劣化の食材が含まれていることがあり、本部へ改善を申し入れても改善が見られなかった。
BXは店舗がある所在市で、フランチャイズシステムによらない食材提供サービスを開始したが、これは独占的営業保障義務違反である。
CXに法定開示書類の不交付があり、これは公益的観点からしても、競業避止義務規定の効力は否定されるべきであり、競業避止義務をYに課するのは不合理である。
(4)Xの書類の不交付により、Yは契約内容を熟考する機会が奪われた。この事情は、競業避止義務をYに課するのは不合理であることを基礎付けるものである。
(5)XはYを含む全加盟店に受発注システムの更新を強制させたが、これは優越的地位の濫用に該当し、この面でも競業避止義務規定の効力は否定されてしかるべきである。
以上が本件の競業避止義務規定が無効であり、合理性を欠くとするYの主張である。
5.これに対する本部(X)の主張において、通常なされる反論は省略し、実務上参考になるものを挙げておくと次の通りである。
(1)フランチャイズシステムによらない食材提供サービスについては、高額、購入者自ら解凍調理、購入者の送料負担、まとめ買い、安否確認のサービス無し、などの点においてフランチャイズ事業と差別化しており、加盟店も営業することができ、その際には売上の10%の歩戻しがあるので、競合はしない。
(2)法定開示書類の不交付については、Xのフランチャイズ事業を立ち上げた直後の契約(平成12年9月)で、その可能性はあるが、その後の契約更新時(平成17年9月)については交付しており、Yは契約内容を熟知した上での契約更新である。
(3)受発注システムの更新は、パソコンのOSをウインドウズXPからビスタへ変更、迅速適切な受発注処理をするためのもので、加盟店も本部もその恩恵に浴するものである。
6.以上の両当事者の主張と事実を踏まえての裁判所の判断は次の通りである。
(1)競業避止義務条項と同条項違反による損害金支払い義務は公序良俗に反し無効かについて。
ア.本件の競業避止義務規定の趣旨目的の合理性
@Xは業界においては、有力な企業であり、一定の評価を受けている。YはXの信頼・評価を基に宣伝・広報活動を行うことで、顧客を獲得することができたといえる。Yは弁当宅配事業の経験はなく、Xのフランチャイズシステムを利用することなしには、事業を軌道に乗せることは困難であったというほかはない。Xはテリトリー制を認め、Yは独占的に弁当事業を営むことができた。したがって競業避止義務規定は、Xのフランチャイズシステムを利用して獲得・形成した顧客・商圏をそのまま流用することを防止し、Xのフランチャイズシステムの顧客・商圏を保全する意義を持つもので、合理性を有する。実際、Yが屋号のみを変更して営業を続けていることを制限しない場合には、Xが不当な損害を被ることになる。
AYは、Xが加盟店の顧客獲得に何ら寄与していないと主張するが、市の高齢者配食サービス事業に参入することができたのは、Xのフランチャイジーであるからこそ市の参入要件(後述)を充足することができたのであり、Yの供述はにわかに採用できない。
B加えて、Xは日替わりメニューを用意、一食あたり多くの品数を揃え、高齢者向けの味付けをおこない、栄養のバランスに留意、安否確認のサービスの付加価値をつけるなど、他の業者との差別化に意を用いている。本件の競業避止義務規定は、このようなノウハウをそのまま流用することを防止し、Xのフランチャイズシステムのノウハウ等の営業秘密を保持する意義を持つもので、この点からも競業避止義務条項は合理性を有するものというべきである。
イ.本件の競業避止義務規定によってYが被る不利益の程度
本件の競業避止義務は、契約終了後3年間、本件フランチャイズシステムと同種の弁当販売業、弁当製造及び弁当宅配業に限定、営業差止め停止の地域はYの店舗がある市に限定しており、Yが被る営業自由の不利益は、相当程度緩和されていると認められる。
ウ.以上によれば、本件の競業避止義務規定は、Xのフランチャイズシステムの顧客・商圏を保全するとともに、Xの弁当宅配業のノウハウと営業秘密を保持し、重要かつ合理的な趣旨目的を有するというべきである。他方、Yの営業自由の制約等の不利益は、相当程度緩和措置が採られている。したがって、本件の競業避止義務規定は、Yの営業の自由等を過度に制約するものとはいえず、公序良俗に違反し無効であるとはいえない。これに対して、Yは不利益を被るとしても、フランチャイズ契約を自ら解消したことによる結果であり、そのことをもって直ちに同規定が公序良俗に違反し、無効であるとまでは言い難い。
エ.Yが主張する公序良俗違反を基礎付ける事情
@Yは契約を更新して8年もの間、Xのフランチャイズシステムに対する信頼・評価を基に顧客を獲得し、同システムの持つノウハウを活用して事業を行なっていたのであり、Xには競業避止義務規定によって保護される顧客・商圏及びノウハウがある。さらにXのスーパーバイザーは定期的に店舗を訪問し、Yの収益状況を確認し、店舗の運営方法について助言を行なうなどしていたから、Xによる経営指導がなかったということはできない。よってYの主張は採用できない。
A食材の配送については、Xは保健所から具体的に指導を受けたことはなく、フランチャイジーから頻繁にクレームを受けているような事情も見受けられない。よって、Yの店舗へ配送した食材の一部に不備があったとしても、それをもって本件の競業避止義務が公序良俗に違反し、無効であるということにはならない。
Bフランチャイズシステムによらない宅配システムの顧客は、供給された冷凍食材を自ら湯せん又は自然解凍し、盛り付けた上で食事することになり、主要な対象顧客とサービスの内容の点で、フランチャイズシステムとは異なっており、両者が競合するとはいえない。よってYの主張は採用できない。
CYが本件フランチャイズ契約の内容について、十分に理解していなかったことを窺わせる事情は見当たらない。かえって競業避止義務が課されていることを認識していた。また、法定開示書類の交付がなかったことをもって、直ちに本件の競業避止義務規定が公序良俗に違反し、無効であるとはいえない。よってYの主張は採用できない。
D受発注システムの更新については、本部と加盟店のオンラインによる事務処理を迅速、適切に実施するためになされたもので、それなりに合理性のある措置である。これに伴う加盟店の負担も、月3万1,500円と過大なものでもない。したがって、受発注システムの更新は、本件の競業避止義務規定が公序良俗に違反することを基礎付ける事情とはいえない。よってYの主張は採用できない。
以上を総合すれば、本件の競業避止義務規定が、公序良俗に違反し、無効であるとはいえない、というのが裁判所の判断である。
(2)Yの連帯保証人に対する営業差止めの請求について。
連帯保証人に対する営業差止め請求の訴訟物は、連帯保証契約に基づく連帯保証債務の履行請求権である。ところが、Yの競業避止義務それ自体は、不代替的債務である。XのYの連帯保証人に対する連帯保証契約に基づく営業の差止めを認めるべき事情も見出し難い。したがってこの点に関するXの請求は理由がないというべきである、として裁判所は棄却した。
(3)規定損害金の遅延損害金の起算点について。
規定損害金の支払い期限が契約終了日(平成20年8月31日)であったとは認められない。その支払期限の定めはないから、その履行期は、請求の日である。したがって裁判所は、規定損害金に関する遅延損害金の起算点は、主債務者Yに対する訴状送還の日の翌日である平成21年2月21日となる、とした。
7.以上により、本部の加盟店に対する同一市内における3年間(契約終了日の平成20年8月31日から3年間)の同種業務の差止め、及びロイヤリティ相当額の36か月分の約定損害金支払の請求が認容された。
8.弁当宅配業の経験がない加盟店が8年間、本部のフランチャイズシステムに対する信頼・評価を基に顧客を獲得し、同システムの持つノウハウを活用して事業を行なった後、自ら契約を解約し、店舗の名称を変えて営業を続けたことに対しては、競業避止義務規定に抵触する恐れがある、とする本件での裁判所の判断には無理がないと思われる。最後に、市の高齢者配食サービス事業に加盟店が参入できた要件を、実務上参考になるので下記に挙げておく。これも裁判所が指摘するように、本部が持つノウハウの一部であろう。
@管理栄養士が献立組みをすること。
A食事内容が栄養価基準を満たしていること。
B配食時間が基準通りであること。
C安否確認の方法が基準を満たしていること。
D事業者が過去に行なってきた配食事業の実績、配食数が基準を満たしていること。
以上であるが、加盟店がこれらの要件を満たし独力で参入することは、難しかったであろうと裁判所は指摘している。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2080号
←トップページへ戻る←判例研究索引へ戻る↑このページの先頭へ戻る