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判例 37
加盟店の本部に対する損害賠償請求訴訟において、営業損失が損害と認められたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2071号より)
平21年2月5日民事部判決、一部認容、一部棄却(控訴) 損害賠償請求事件、大津地裁平18(ワ)115号 フランチャイジーとして菓子の販売をする者が、フランチャイザーに対して、フランチャイズ契約に違反し、契約時に店舗の売上げ予測に関して不正確、不合理な情報を提供したとして求めた、債務不履行に基づく損害賠償請求が認められた事例
この判例から学ぶ
1.洋菓子フランチャイズチェーンの加盟店(X)が、開業後1年2ケ月で営業に行き詰まり、本部(Y)を相手どって店舗の売上・収益予測に関して不正確・不合理な情報を提供し、適切な経営指導を怠ったとし、債務不履行に基づく損害賠償を請求した。判決は、Yのマーケットリサーチについては、特段問題はないが、店舗のシェア率を過大に設定したことに誤りがあり、Xに対する情報提供義務違反の責任は免れないとし、Yの損害賠償責任を肯定した。同時にXにも過失があったとし、50パーセントの過失相殺を行った。今日,損害賠償請求裁判は珍しくなくなったが、営業損失を損害と認めるなど、裁判所が損害の内容を詳細に判断している点が参考になるのでここで紹介した。
2.本件の争点は下記の4点である。
(1)売上・収益予測に関する情報提供義務違反の有無
(2)経営指導義務違反の有無
(3)原告の損害額
(4)過失相殺の可否及び割合
3.上記の争点における裁判所の判断は次の通りである。
争点(1)については、商圏の設定に特段問題があるとはいえないが、シェア率の設定においては、その過程で競合店となり得る店舗の調査を十分にせず、合理的根拠を欠いた分析を行って、本件店舗のシェア率として、一次商圏内ではぼ独占に近い地位を確保でき、二次商圏でも地域一番店といえる地位を確保できるという過大な設定をしていたものである。そして、本件算出方法では、シェア率を高く設定すれば当然に売上高も大きくなるのであり、本件店舗の実際の売上高が被告の売上予測に遠く及ばない結果に終わったことについては、被告が本件店舗のシェア率を過大に設定していたことが、その一因であったと推認され、Yの情報提供義務違反の責任は免れない。
争点(2)については、Yの発注指導、経営改善指導、Xが店舗閉鎖を望んだがYが強引に営業を続けさせたというXの主張などに、Yの義務違反はない。
争点(3)については、Yの情報提供義務違反と相当因果関係のある損害は次の通りであるとした。
@成約預託金 4,091千円
内訳;研修費用200千円、開業準備手数料300千円、商品代金3,591千円(加盟保証金5,000千円で相殺され、Xへ1,409千円返還されている)
A本件店舗の賃貸借関係費用 4,972千円
内訳;保証金4,500千円、仲介手数料472千円
B店舗工事代金等 18,119千円
内容は、店舗の設計及び工事、カーポートの工事、並びに空調機器及び金庫の購入代金
C原状回復費用 15,345千円
内訳;リース契約(ケーキケース他一式)の解約金13,843千円、警報機器の撤去費用19千円、看板の撤去費用228千円、店舗の原状回復工事5,755千円の合計19,845千円の費用から入居保証金4,500を充当控除した残額
D営業損失 16,812千円
開業時の平成16年9月から閉店時の平成17年10月の1年2ケ月の間の営業損失のうち、Xが独自の責任で営業を継続した期間を除く、開業から平成17年2月までの6ケ月の営業損失を、Yの情報提供義務違反と相当因果関係のある損害と認めた。
以上、Xの損害額の合計(@+A+B+C+D)は、59,339千円となる。
争点(4)については、Xは融資業務に10年以上携わるなど計27年間銀行員として勤務していたのにかかわらず、Yから提示された売上予測について説明を求めず、損益計算書を検討することなくフランチャイザーの言動に寄りかかりすぎた軽率なものであった。この過失を斟酌すると、50パーセントの過失相殺をするのが妥当である。
4.認容額の計算
以上Xの損害額は59,339千円であるから、これから過失相殺をすると、29,669千円となる。弁護士費用については、本件事案の難易、心理の経過、認容額に照らすと、2,900千円をもってYの情報提供義務違反と相当因果関係のある損害と認められるとした。
5.本件事案から学ぶ点は多い。年間売上予測は、1億5,100万円で、開店後の年間実績は予測比46%である。裁判所は、本部のマーケットリサーチについては、セオリー通りであると認めているが、問題はシェア率の算定にあったと判断している。シェア率をいくらにするかは、本部の既存店のデータを参考にするものの、店舗開発担当者の経験と勘が生かされるところであり、時には投資額から逆算して願望が入り込むこともある。本件店舗の北2.5Kmに1年半前まで同じチェーンの店舗が営業していたが、閉鎖の経緯が明らかにされていないことも裁判所は指摘している。予測と実績の乖離幅が大きいことを考えると、担当者に読み切れなかった情報があったのかもしれない。
損害賠償額の内容を見ると、フランチャイズ事業における投資の構造と内容がよくわかるであろう。特に、契約半ばで店舗閉鎖した場合には、リース契約の違約金の発生、原状回復費用の発生など莫大な負の費用が発生する。これを見ても、フランチャイズ加盟はよく理解し慎重であるべきだと言える。
中小小売商業振興法では、売上・収益予測の提案・説明の義務は本部に要求されていないが、提案・説明する場合には、合理的、客観的な根拠ある手法と数値にもとづいて行うこと、とされてる。だが一方では、「売上・収益予測については、その重要性に鑑み、提供義務を認める裁判例もあり、これを肯定する学説もある。(判例時報2071号76ページ)」というのも事実である。経験から言えば、この問題はザーとジーの間の加盟交渉の中で必ず出る問題であり、長い交渉を重ねる中で互いに信頼関係を築き合意に達するものである。法律で規制することには一長一短があるだろう。
本部のスーパーバイジングについては、裁判所は義務違反はないとしたが、加盟店側のオペレーションについては、品揃えの面でオーナーと親戚が担当する店舗スタッフ(マネージャーや店長)の間で、不協和音があり、これが店舗業績に悪影響を及ぼしたと見られる。本件事案のように、消費・賞味期限付きの商品を扱う物販(小売)業フランチャイズの場合には、品揃えに対するザーとジーの間の考え方の違いがトラブルの原因になりやすい。フランチャイズ事業は、加盟店のオペレーションがあってはじめて成り立つものである。開店後の年間実績が予測比46%でしかなかった要因は、加盟店側にもあると言えるかもしれない。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2071号
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