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判例 35
エリアエントリーのフランチャイズ契約を締結した加盟店が、本部と店舗開発・SV代行企業に対して起こした損害賠償請求裁判における高等裁判所の判断
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2068号より)
一審東京地裁平17(ワ)22482号ほか、平成21年1月27日判決 損害賠償本訴請求、各種損害賠償反訴請求控訴事件、東京高裁平21(ネ)1043号、平21・12・25民17部判決、変更(上告・上告受理申し立て) 1.フランチャイズ契約において、フランチャイザー側に詐欺的な契約締結の勧誘及び経営指導義務違反があるとして、フランチャイジーからの損害賠償等の請求が認められた事例
2.フランチャイズ契約において、フランチャイザーからの競合避止義務違反による違約金請求が、権利の濫用に当たるとされた事例
この判例から学ぶ
1.本件は控訴審である。控訴人は、加盟店である甲野社(判例時報の表示に従う、以下同じ)、丙川社、丁原社の3社である。被控訴人は、フランチャイズ本部であるFF社、加盟店募集業務と経営指導業務の委託を受けたVL社の2社である。エリアエントリー契約と呼ばれるフランチャイズ基本契約は、「ごはん屋まいどおおきに食堂」で、丙川社のみ他に「神楽食堂串屋」の契約も締結した。
2.出店状況は、甲野社は2エリア契約で実際に出店したのは、契約エリア外で2店舗、丙川社は1エリア契約を行ったがエリア内とは言え当初予定した立地と異なる場所で1店舗出店、さらに1エリア契約を締結したが未出店、「神楽食堂串屋」契約については出店できなかった。丁原社は、営業中の既存のフランチャイズ店舗を2店舗一括譲渡を受けて契約締結した。契約条件は、1店舗当り加盟金500万円(平成13年は600万円、平成15年は800万円)、加盟保証金100万円(契約終了時には返還)、6%のロイヤリティの支払いと、契約締結後11箇月以内に加盟店の責任で店舗物件が見つからなく開業できないときには、加盟金は没収されることになっていた。
3.本件の争点は、被控訴人(FFとVL)らに加盟契約に至る過程で詐欺及び詐欺的勧誘があったか、そして開業後に経営指導義務違反があったかどうかである。原審の東京地裁の判決は、原告(この時点は4社)の損害賠償請求を退け、被告側が反訴していた競業避止義務違反を認め、1社に対して営業停止を命じた。
4.高等裁判所は、認定事実、証拠及び弁論の全趣旨を総合し、さらに以下の各事実を推認した。
(1)東京都内における外食業用店舗物件の確保の困難性
大阪府を中心に多数の直営店舗を経営してきた被控訴人FFが、東京地区での展開に際し直営店を開業しようとしたが認知度が低いので難しく、開業後も閉店を余儀なくされた。このことから、特定の駅から半径500m以内という限定された範囲内に、11箇月内に店舗物件を確保することは、ほとんど不可能であった事実を推認することができる。
(2)店舗物件の確保が困難であることについての被控訴人らの認識
店舗物件の確保が難しいことを直接体験した被控訴人らは、店舗物件を確保する前に契約を締結することはリスクが高いこと、被控訴人VLが不動産仲介業者と提携し、30人のアルバイトが物件の探索に従事しても、その困難性を解消でいないことを認識していた、と推認できる。
(3)店舗物件確保可能性に関する虚偽の事実の故意による伝達
被控訴人VLに依頼すれば、物件探しが容易で確実に確保できるという印象を与え、加盟店勧誘資料についても契約済みのエリアでも物件が見つかっていないことは伏せている。
(4)加盟店が店舗物件を確保できない場合における被控訴人らの得失
11箇月以内に加盟店が物件を確保できないときには、エリアを変更させ店舗数を増加させることができるところ、実際に解除権を行使することはないと被控訴人は主張するが、損害賠償請求を受けたときには、競業避止義務条項を発動してエリア外での開店を誘導することも経験則上明らかである。
(5)店舗物件確保前の契約締結にこだわる被控訴人らの意図
加盟店の利益を犠牲にしてでも被控訴人らの加盟金収入(VLは委託報酬)を増加させかつ店舗数を増加させるために、異例の店舗確保前の契約締結という方式を採用したものとみることができる。この加盟金収入の増加は、被控訴人FFの株式上場の原動力の一つとなったとみるのが自然である。
(6)被控訴人による杜撰な立地診断
被控訴人VLが実施する立地診断は有料であるにもかかわらず、立地診断の採点基準の甘さ、故意による診断合格など、杜撰で信頼性に欠けるもので、経済常識を基準とすれば、詐欺に等しいと言っても過言ではない。
(7)SVの臨店指導の本件フランチャイズ契約上の位置付け
SVの臨店経営指導は、フランチャイズ契約の不可欠の要素であり、経営指導についての専門性を有するSVによる指導を受けることができるのが通常である、と広く認識されているところ、本件契約はこのような一般的な認識とは異なる内容である旨の注意喚起を行っておらず、むしろ逆にSVによる指導を受けることができることを本件フランチャイズ契約締結のメリットとして強調して説明をおこなった。
(8)専門性を有するSVの育成確保の被告控訴人らによる懈怠
SVに未経験者が多く、社内における十分な研修、教育を経ずにSVとして現場に送り出された者が多かったものと推認される。SVの質の向上のために、必要な社内研修を十分に実施せず、質、量の確保のために必要な費用の支出を惜しむ一方で、比較的経費をかけずに実施可能な「チェックリスト100」の作成とその運用などにより当面を乗り切ろうとしていたものと推認される。
(9)東京地区における被控訴人らのビジネスモデル
店舗物件の確保が容易、契約エリアにおいて食堂を独占的に営業することができ、開業後も他のフランチャイズチェーンと同水準の専門性のある経営指導を受けることができる、と虚偽の説明を行い、これを誤信した者たちが応募者の中に多数いることを承知の上で、
@原則として店舗物件確保前に本件契約を締結して、契約締結数と加盟金収入を増加させ
A加盟店確保に苦しむ加盟店に対しては、エリア外の開店をすすめて店舗数を増加させ、開店できなかった加盟店からも加盟金を没収
B専門性のあるSVを必要な数だけ養成することを怠り、専門性のあるSVによる経営指導の履行を提供しないにもかかわらず、店舗損益の状況如何を問わずに売上の6%のロイヤリティを取得
以上のようなビジネスモデルは、コンプライアンス上の問題があることはもちろんのこと、広く一般投資家から資金を集め事業を営む上場企業のビジネスモデルとしても問題のあるところである。被控訴人FFが東京地区への展開を企図した際、加盟店にも十分な利益が出るように展開することを希望していたとしても、被控訴人らの言動を見る限り、上記のビジネスモデルとなったことは明らかである。
5.以上の認定事実に基づき裁判所が下した判断は下記の通りである。
(1)控訴人甲野社と丙川社に対する勧誘について
本件契約時に搾取されたも同然の加盟金及び加盟保証金の支払い義務を定めた部分は、公序良俗に反するものとして無効というべきである。
(2)控訴人丁原社に対する勧誘について
営業中の既存のフランチャイズ店舗の譲渡を受けて契約締結をしたが、偽った損益計算書の提示を受けて勧誘を受けており、真実の売上げ月額を丁原社が知っていたら契約をしなかったものと考えられ、従って加盟金の支払い義務を定めた部分は、公序良俗に反するものとして無効というべきである。
(3)経営指導義務違反について
被控訴人FFは、経営指導義務の債務不履行により控訴人らに生じた損害(利益の減少又は損失の増加)を賠償する義務を負う。他方被控訴人VLについては、加盟店勧誘時とは異なり、虚偽の事実を告げる等の行為をしていないのであるから、経営指導不行為をもって不法行為に該当する、とみるのは困難である。
6.裁判所がおこなった損害賠償額の算定
(1)被控訴人(FFとVL)らの共同不法行為(詐欺)により加盟金の支払いは無効になるので、各自控訴人へ加盟金を返還すべき義務を負う。
(2)経営指導義務違反については、これによる損害の額を算定することは極めて困難であり、被控訴人は支払済みロイヤリティの額が損害であると主張するが、そのように断定することはできない。そうすると、民事訴訟法248条(注)により、口頭弁論の全趣旨及び本件全証拠に基づき相当な損害額を認定することになるが、本件においては被控訴人FFの経営指導義務の不履行により1箇月1店舗につき2万円相当の損害(損益の悪化)が生じたものと認めるのが相当であるとして、各店舗の営業月数に従い、経営指導義務を怠った被控訴人FFへ損害賠償の支払いを命じた。
(注)民事訴訟法248条:損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
7.被控訴人FFの反訴請求(競業避止義務違反関係)について
被控訴人らが前記認定の通り、詐欺的行為によって本件フランチャイズ契約の締結を被控訴人らに勧誘し、かつフランチャイズとしての経営指導を行わず、控訴人らがノウハウをほとんど受けていないという経緯に照らすと、信義誠実の原則に違反し、権利の濫用であって、許されないものというべきである。従って、被控訴人FFの営業差止請求及び競業避止義務違反による違約金請求は全部理由がないとし、裁判所はこれを棄却した。
8.この判例から実務上学ぶ点は多い。下記はその中の主要な点である。
(1)エリアエントリーによりフランチャイズ契約を締結することのリスクの認識
裁判所は、エリアエントリー契約に関しては判決文の中で、「我が国の小売業や飲食業の標準的なフランチャイズ契約においては、店舗物件を確保してからフランチャイズ契約を締結する場合が多いことは、公知の事実である」と述べ、又「フランチャイズ契約としては異例の店舗確保前の契約締結という方式」と断定している。それ故に、リスクが生じることを上記推認で指摘、ビジネスモデルとして考えてもこれは難しいとしている。この面においては裁判所が指摘する通りで、加盟店も先を急ぎ過ぎたきらいがある。
(2)フランチャイズ事業の中核をなすSVの育成と経営指導
フランチャイズ事業において実務上最も難しいのは、加盟店に対する経営指導である。特に本件のような外食業の場合には、調理技能の指導が伴うのでさらに難しさが増す。これらを担うSV候補人材を育成することは本部企業にとっては容易なことではない。望ましい人材は、直営店の店長経験者から複数店舗を統括するエリアーマネジャーを育て、さらにこれらの人材の中からSVを選別することになる。フランチャイズ契約書には、経営指導の内容は簡単に表現されるのが一般的である。それは何故か。加盟店の数だけ経営指導の内容と手法は異なるからである。優秀な本部は、加盟店の繁栄が結果としてチェーン全体の繁栄につながることを知っているので、自社の経営指導体制の構築に力を注ぐ。これが加盟店からみた本部の優劣を決める判断基準になる。
(3)加盟店募集業務と経営指導業務の外部委託
本件の被控訴人FFは、加盟店募集業務と経営指導業務を被控訴人VLへ外部委託をしている。裁判所はVLの加盟店勧誘については、虚偽の事実の故意による伝達などがあったと判断したが、経営指導については、経営指導不行為をもって不法行為に該当するとみるのは困難であるとし、経営指導義務違反があるのは本部FFにあるとしている。フランチャイズ本部の重要な機能である店舗開発と経営指導の2つの機能を外部企業に委託する、つまり丸投げすることは好ましいことではない。何故なら、この2つを自社内で実施しノウハウを蓄積していくことでフランチャイズ・パッケージがバージョンアップ(ブラシュアップ)していくからだ。外部委託は又、フランチャイズ契約上の権利・義務と責任の範囲の面でも当事者間で不明確になり、トラブルの原因になりやすいので絶対に避けるべきである。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2068号
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