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判例 34
イタリア料理店の料理長は、管理監督者かどうかが争われたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2036号より)
平成21年2月9日民11部判決、一部認容、一部棄却(確定) 賃金等請求事件、東京地裁平19(ワ)15779号 1.イタリア料理店の料理長であった原告につき、労働基準法41条2号にいう管理監督者に当たらないとされた事例
2.原告らが、自分たちのタイムカードを勤務先である店舗から持ち出した行為により警察に逮捕されたことにつき、法人である使用者及びその代表者に原告らに対する不法行為が成立しないとされた事例
この判例から学ぶ
1.「名ばかり管理職」を争った事件は、マクドナルド事件( 判例25 )が一般に知られている。本件イタリア料理店の料理長における判決では、これまでの裁判例と異なった判断を示すものではない(判例時報2036号の解説より)が、フランチャイズにおいては外食業が多く見られるので、事例を付け加える意味でここで取りあげた。
2.原告は、料理長と他に接客サービスと調理の両方を担当する正社員で、被告は使用者であるイタリア料理店(法人格)とその代表者である。原告は時間外手当の支給と一部未払い賃金の支払いを請求したが、料理店側は料理長は管理監督者であるので時間外手当の支払い義務はない、と主張して争った。店ではタイムカード管理がなされていたので、時間外手当ての請求に備え、原告らは事業所に侵入してタイムカードを盗み出したのを、被告から建造物侵入、窃盗等で被害届けを出された結果、原告らは逮捕されて身柄拘束期限に釈放された経緯がある。
3.上記の争点の一つである警察による逮捕という被告の不法行為に対する原告らの慰謝料請求は、逮捕は警察の判断によるものとして棄却された。この面での詳細は省略する。
4.管理監督者かどうかの判断基準は、裁判例では名称にとらわれず(1)職務内容や権限と責任(2)経営者との一体性(3)労働時間に関する自己裁量性(4)相応しい待遇など、を基準としている。(管理監督者の関係通達、昭22.9.13発基17号、昭63.3.14基発150号に詳しい)
5.本件事案の料理長は管理監督者に当たらない、とした裁判所の判断は次の通りである。
(1)原告は料理長という肩書きが与えられて、厨房スタッフ3名程度の最上位者にいたが、部下の採用権限を有しておらず、人事考課を行った事実もない。
(2)出すメニューは全て被告の了承を得たもので、広範な裁量があったとはいえない。
(3)レストランの営業時間は決められており、出退勤を自由に決められるわけではなかった。
(4)待遇についても、賞与、歩合給、役職手当もなく月給額も経営者と一体的な立場とは到底言えない額であった。
従って、被告は時間外手当の支払い義務を有するべきである、というのが裁判所の判断である。同時に、労働基準法114条に定められた付加金の支給も、時間外手当と同額の支払いを命ずるのが相当であるとした。
6.上記5.に見る通り、本件の料理長は管理監督者に当たらないとする裁判所の判断事由は明快である。専門店レストランにおける経営は、シェフ(cyef 料理長)自らが一軒の店を持ち経営を行うオーナーシェフ(owner cyef )方式が望ましい。イタリアやフランスのレストランなどで長い間、努力と苦労を重ね修行した料理人が、日本に帰国後に店を持ち経営に成功する例が多いのは、このことによる。経営者と料理長が別人である場合には、本件事案に見るような労働契約上の問題が起こりやすいであろう。専門店の経営とオペレーションのあり方を考える上でも本件は参考になる。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2036号
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