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判例 31
労働者派遣事業のフランチャイズにおいて、契約終了後の競業避止義務が公序良俗に違反し、無効とされたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2037号より)
平成21年3月9日民32部判決、本訴棄却、反訴一部認容・一部棄却(控訴) 損害賠償請求事件(本訴・反訴)、東京地裁平18(ワ)24341号・同19(ワ)19360号 1.フランチャイズ契約において、契約終了後の競業避止義務が公序良俗に違反し、無効とされた事例
2.フランチャイザーはフランチャイズ事業を全国展開し、ブランド力を強化すべき債務を負っており、全国展開計画が頓挫したことがフランチャイザーの債務不履行に当たる旨の主張が排斥された事例
この判例から学ぶ
1.本件の原告は、労働者派遣事業を営むフランチャイズ本部である。加盟店(被告)が契約終了後に事業を継続しようとしたことに対して、競業避止義務違反として訴えたところ退けられ、加盟店も本部の債務不履行の数々を挙げ反訴したところ、排斥されたのが本件の概要である。フランチャイズ事業分野においては、労働者派遣事業は少ないこともありここで紹介したい。
2.本部(原告)は、東京都に本店を置き、大阪市、名古屋市、浜松市及び宇都宮市に登記された支店を持ち、その他にも複数の営業所を有するが大阪市以西にはない。フランチャイズ事業については、九州地区の本件の加盟店(被告)が1号店であり、以降4号店(千葉)まで開発したが、4号店の営業成績はなく、2号店(大阪)、3号店(群馬)も契約更新に至らず、本件の1号店の契約更新以降は、本部はフランチャイジーの募集活動を行っていない(判例時報2037号より)。本件加盟店は、加盟3年後に一度契約を更新し、更新後3年の契約期間満了時に解約をしており、本部とは2期6年間の取引があった。本部の直営店の店舗数や営業状況の有無は不明である。
3.契約終了後の競業避止義務について、裁判所が無効とした理由は次の通りである。
(1)加盟店(被告)が労働者派遣事業を営んでいた九州地区で、本部(原告)の商圏が成立していたとは言えない。
(2)本部が加盟店に提供した営業ノウハウは、解約時(契約期間満了時)には秘密性及び有用性を欠き、保護に値する程度がごくわずかであった。
(3)加盟店は、本件フランチャイズ契約にある引継ぎ規定(本部又は他の加盟店がやめる加盟店の顧客・商圏を対価をもって引き継ぐ)に伴う対価が得られなかった。
(4)解約原因に、本部の全国フランチャイズ展開計画の頓挫、加盟店にとって有益なソフト開発の放棄などが多分に影響していることが考えられる。そうすると、競業禁止によって保障される本部の利益と、競業禁止によって蒙る加盟店の不利益を対比させると、競業避止規定の制限は社会通念上是認しがたい程度に達しているというべきであり、公序良俗に反して無効である。
上記が裁判所の判断である。有益なソフト開発とは、加盟店相互による人材・受注・市場情報などのネットワークシステムであるが、他に加盟店を開発できなかったことを考えると、システムの構築は不可能であっただろう。
4.本件は、加盟店(本訴被告、反訴原告)が本部(本訴原告、反訴被告)に契約不履行があったとして支払い済みロイヤリティのうち不履行部分(7割)に相当する損害賠償請求をおこなっている。加盟店は、本部が提供すべきサービスを14個に区分して具体的に主張を展開したが、2個は本部の債務として合意されたと認められないし、残る12個についても一応の提供があり、本部の債務不履行は認められない、と裁判所は判断した。
5.この反訴の争点であるが、本部の競業避止義務を無効とする判断基準に、裁判所は一部本部が加盟店に提供すべきサービスの欠如を挙げている反面、加盟店からの反訴については、本部に債務不履行はなかったとしている。この点やや矛盾を感じるところもある。フランチャイズにおけるノウハウやフランチャイズ・パッケージ(将来に向かってのバージョンアップも含む)の中身とその履行を見極めることは難しい。
6.競業避止義務は、原則有効とされる。だが本部がこの権利を行使するには、イ.場所や地域、ロ.類似の事業の解釈や範囲、ハ.禁止する期間、ニ.加盟店(オーナー)の職業選択の自由などにおいて、公序良俗違反や優越的地位の濫用がないかを考え、慎重にその権利を行使する必要がある。フランチャイズ契約における本条項の行使が違法でないかどうかは、あくまでケース・バイ・ケースである。
7.本件の事案において、本部の競業避止の行使が公序良俗に違反して無効とされた事由は、上記3.に述べた通りである。特に1号店(本件被告、反訴原告)開発から6年経過しているのにもかかわらず、加盟店は当該加盟店のみであること、大阪から西において店舗展開が全くないことなどを考慮すると、当該本部が全国展開を唱え、九州地区という広大なエリアーを抑え、同業を排除することを主張するには無理があるように思える。
8.事業のフランチャイズ化は、ほとんどの業種・業態において可能である。但し、フランチャイズ・パッケージを構築することは一様でなく、その難易度は事業内容によって異なる。労働者派遣事業は、派遣元、派遣先、両者間の派遣契約、派遣労働者と派遣元との労働契約、派遣先の派遣労働者に対する指揮監督権行使の内容、業法(労働者派遣法)による規制や禁止、監督官庁による許認可や届け出、手続きなどパッケージ化は難しい事業の一つであろう。本件事案でもフランチャイズ事業は1号店のみで終わり、本部は、その後の加盟店開発を断念している。その難しさが推測できる。
資料出所;判例時報社発行の判例時報の2037号
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