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判例 29
飲食店フロアーへのテナント出店には借地借家法が適用されるか
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2020号より)
平成20年6月30日民33部判決、一部認容、一部棄却(控訴) 建物明渡請求事件、東京地裁平18(ワ)28480号 JR駅構内の店舗の賃貸借契約につき借地借家法の適用が否定された事例
この判例から学ぶ
1.駅ビルやショッピングセンターなどの大型商業施設へのテナント出店については、出店条件、賃貸借契約の内容、改装時のフロアー全体への協力度合いなどをめぐり、家主(ディベロッパー)とテナントとの間でトラブルが起こりやすい。本件もその一つであるが、家主とテナントとの関係のあり方も含め、借地借家法の適用が否定された例として実務上参考になるだろう。
2.駅ビル(原告)の8階のレストラン街に出店している西洋料理を営業種目とするテナント(被告)が、原告から退店の要求を受けて争ったのが本件の内容だが、その経過は次の通りである。
・被告は、昭和58年頃に出店し、平成8年の全館改装時に原告の要求に応じ出店区画を移転すると共に、賃借面積を70平米以上増加させた。
・この平成8年の3月25日に、平成10年3月31日までの期間10年の賃貸借契約を締結した。
・契約更新条件については、期間満了の6か月前に当事者の一方から、相手方に対して解約の意思表示がないときは、更に期間を2年延長することとし、以後もこの例によるとした。
・その後、平成10年3月31日、同12年3月31日、同14年3月31日、同16年3月31日にそれぞれ期間を2年間延長した。
・原告は、平成17年9月28日(6か月前)に、被告に対し、後述の理由と条件により本件賃貸借契約を平成18年3月31日の期間満了をもって終了させる旨の通知を行った。
・これに対して被告は、平成18年4月1日以降も営業を継続した。
3.原告は、被告に対して、本件紛争を円満に解決するため、借地借家法28条(更新拒絶の要件条項)の規定の趣旨に基づき、立退料として3000万円の支払いと原状回復費用(原告見積もり)1453万2575円の免除を申し出た。
4.原告が期間満了をもって終了させたいとした事由は次の通りである。
(1)被告の売上げがフロアーの平均以下である。
(2)衛生上の問題発生
(3)接客上の問題発生
(3)信頼関係を損なう被告の行為(営業改善計画の不提出、営業努力の不足、店長会議への欠席、退去申し出書面の受領拒否等)
(4)立退料を支払い、原状回復費用を免除するので、円満退去してもらいたい。
5.上記4.原告の主張に対して、被告は、出店に際しては多額の投資を行ない、賃料の増額にも応じてきたので契約更新を拒絶するには、相当の強度を備えた正当な事由が必要であり、売上についても原告がフロアーの集客対策などを怠ったのが原因であるとして、原告の主張に個々に反論した。
6.上記の経過の中で、本件の争点は次の3点である。
(1)本件賃貸借契約に借地借家法の適用があるか。
(2)上記(1)において、
(ア)借地借家法の適用があるとされた場合、原告が本件賃貸借契約の更新を拒絶するための正当な事由があるか。
(イ)借地借家法の適用がないとされた場合、原告が本件賃貸借契約の更新を拒絶することは権利の濫用に当たるか。
(3)被告が支払うべき諸経費及び約定損害金の額
7.上記6−(1)本件賃貸借契約に借地借家法の適用があるか、という争点に対しては、事実を認定した上で、裁判所は次のような理由を挙げて適用されないと判断した。
・借地借家法の適用がなされる建物であるためには、テナント店舗部分が、他の部分と客観的、明確に区分され、独立排他的な支配を可能とするものであることが必要である。
・当該店舗は、間仕切りにより他の店舗と区分されてはいるが、これは出店に際して設置されたもので、契約面積には賃料の対象とならない通路等の部分が含まれている。
・独自の施錠設備や独立した外部からの出入り口はない。
・出店区画を移動し、契約面積を増加させている経緯(前述)があり、建物としての独立性を認めることは困難である。
・営業及び休業、並びに営業時間、営業品目、用員の採用等までさまざまざ制約が課されており、被告自らの判断でこれらを決めることはできない。
以上により、本件の賃貸借契約は借地借家法の適用はないとした。
8.上記の通りとするならば、争点(2)−イ原告が本件賃貸借契約の更新を拒絶することは権利の濫用に当たるか、という点に関しては、裁判所は権利の濫用にはならないと判断した。判断に際しては、レストラン街に出店するテナントは、他のテナントやディベロッパーと協力して全体の知名度やブランドイメージを向上させ集客力、競争力をより高めることにより単独店では得られない共同の利益を求めるべきであるという考え方に立ち、立退料や原状回復費用の支払いも考慮に入れ、原告に有利な判断を行ない、権利の濫用には当たらないとした。
9.争点6.の(3)被告が支払うべき諸経費及び約定損害金の額については、明け渡しまでの損害金計算なのでここでは省略する。
10.駅ビルやショッピングセンターなどの大型商業施設へのテナント出店については、売上高が低迷低下傾向にあるテナントは、ディベロッパー側から館内の改装などを機会に店内配置換えと営業スペースの変更を要求されることが多く、時には退店を迫られることがある。つまり、テナントは物販(小売業)業、飲食業にかかわらず時の経過と共に業態の陳腐化は避けられず、ディベロッパー側としては、施設全体の活性化と競争力強化、さらには施設全体の知名度やブランドイメージ向上のためには常に新業態・人気業態のテナントとの入れ替えを考えざるを得ない。本件も、駅ビルとテナントの関係が、これに似たような状況に置かれていたと考えられなくはないだろうか。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の2020号
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