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判例 28
店舗外観について不正競争防止法上の類否を裁判所が行ったケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報2003号より)
平成19年7月3日民21部判決、棄却(控訴<控訴棄却>) 不正競争行為差止等請求事件、大阪地裁平18(ワ)10470号 1.店舗外観は、それ自体は営業主体を識別させるために選択されるものではないが、特徴的な店舗外観の長年にわたる使用等により、第2次的に店舗外観全体も特定の営業主体を識別する営業表示性を取得する場合もあり得ないではないとされた事例
2.店舗外観全体の類否を検討するに当たっては、単に店舗外観を全体として見た場合の漠然とした印象、雰囲気や、当該店舗外観に関するコンセプトに似ている点があるというだけでは足りず、少なくとも需要者の目を惹く特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており、その結果、飲食店の利用者たる需要者において、当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要するとされた事例
この判例から学ぶ
1.店舗外観の類似性については、競合他社間で争いの種になりやすい。本件はこの店舗外観について、不正競争防止法上の類否の判断を裁判所がおこなった初めての例(判例時報2003号132ページのコメントより)なのでここで取り上げた。
2.原告Xは、「ごはんや まいどおおきに ○○食堂」(○○の部分には店舗の所在地名が入る)の名称でチェーン展開している外食企業である。被告Yは、「めしや食堂」の名称で同じくチェーン展開している外食企業である。両社の店名表示と店舗外観については、本判例を読む前にインターネットで確認しておかれるといいだろう。
3.Xは、Xの営業表示は著名又は周知であり、これに類似するY表示は不正競争防止法2条1項2号又は1号の不正行為に当たると主張し、Y表示中の「食堂」の表示使用の差止め、破棄及び損害賠償をYに対して請求した。そして予備的に店舗外観についても、同じ請求をおこない仮にそうでないとしても、民法上の不法行為を構成すると主張し、差止め等を求めたのが本件の内容である。
4.本件の争点は、次の5点である。
(1)被告表示Yは原告表示Xに類似するか。
(2)原告店舗外観は営業表示に当たるか。
(3)被告店舗外観は原告店舗外観に類似するか。
(4)被告による被告店舗外観の使用は不法行為を構成するか。
(5)原告の損害
5.上記の争点についての原告と被告の詳細な主張は省略する。(2)の店舗外観を構成する要素については、原告は次のような要素を挙げており、実務上参考になるので列記しておきたい。
A.入り口付近上部に設置された店名を書いた店舗看板
B-1.「みそ汁」「玉子焼」「煮鯖」の毛筆体で書いた外部メニュー看板
B-2.メニューを数十品目程度書いた外部メニュー看板
B-3.駐車場敷地内のポール看板
B-4.店舗外装(主としてフリースタンディング店舗)の配色
C-1.店舗内部のメニュー看板
C-2.店内のツーオーダーによる玉子焼きコーナー
C-3.内装全体の色調、照明、テーブル・陳列台の心理工学的高さなど、全体の統一されたコンセプト
上に挙げた要素の全てが一体となって営業表示性が認められると原告は主張した。
6.以上の争点に対する裁判所の判断は、順に要約すると次の通りである。
(1)被告表示Yは原告表示Xに類似するか。
両表示は類似しないと判断した。その理由は次の通りである。X表示は「ごはんやまいどおおきに(しょくどう)○○しょくどう」又は「まいどおおきに(しょくどう)」の呼称を生じさせるが、Y表示は「めしやしょくどう」又は「めしや」の呼称を生じさせるものであって、両者は類似しない。なお両者は「食堂」の部分で共通するが、食堂は普通名称であって同部分のみから営業主体の識別標識としての呼称、観念をを生じさせることはない。被告は設立後14年以上の間、一貫して「ザめしや」等のブランドのみで店舗経営を行っており、現在でも「ザめしや」「めしやっこ」等の「めしや」のブランドによる店舗が相当数存在すること等の事情にかんがみると、被告表示は「めしや食堂」のみならず「めしや」との呼称も生じさせるものというべきである、とした。この「めしや」業態への被告のこだわりを判決が重視している点は、実務上大変参考になる。
(2)原告店舗外観は営業表示に当たるか。
以上によると、被告の被告表示の使用は、不正競争防止法2条1項2号又は1号の不正競争には当たらない。したがってその余の点について判断するまでもない、とした。
(3)被告店舗外観は原告店舗外観に類似するか。
店舗内外装、店舗・メニュー看板の形状と種類、設置位置、そこに書かれた文字、大きさ、書体、配色、図形(ロゴ)等を詳細に対比させた上で、店舗外観は、それ自体は営業主体を識別させるために選択させるものではないが、特徴的な店舗外観の長年にわたる使用等により、第二次的に店舗外観全体も特定の営業表示性を取得する場合もあり得ないではないと解される、とした。裁判所の指摘の通り、この点はチェーンストアー店舗の展開においては、重要な要素となる。しかしながら本件においては、裁判所は個々の構成要素に共通点が認められるものの、全体として見た場合の漠然とした印象、雰囲気やコンセプトが似ているだけでは保護されず、すくなくとも需要者の目を惹く特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており、その結果飲食店の利用者たる需要者において、当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要する、として両者の店舗外観は類似しないと断定した。そして原告店舗の店内のツーオーダーによる玉子焼きコーナーも、とくに目新しいものではなく独占権を認めることはできない、とした。
(4)被告による被告店舗外観の使用は不法行為を構成するか。
以上の判断により、民法上の不法行為を構成するものではない。
(5)原告の損害
したがって、その余の予備的請求も理由がない。
7.以上により原告の請求はいずれも棄却された。尚、本判決に対しては既に控訴審判決がされており(大阪高裁平19・12・4)、その内容は本判決と概ね同旨である。(判例時報2003号132ページのコメントより
8.外食(飲食)業の同業種・同業態においては、どうしても店舗の外観・内外装は競合他社と似てくるものである。これを避けるには、長年の努力と苦労を重ねた業態の確立しかない。店舗のデザインやハードウエアは簡単に真似られるが、食材の調達力とセントラルキッチンの設置、そして標準化により完成された業態や店舗形態、オペレーションシステム等は、たやすく真似られるものではない。飲食店の利用者に誤認混同を生じさせることなく当該店舗の営業主体が同一であると思わせるものは、この確立された業態の店舗でしかない。本件の被告企業が設立後14年以上の間、一貫して「めしや」業態にこだわってきた点を判決は評価しているのは注目に値する。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の2003号
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