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判例 25
ファーストフッド店の店長は、管理監督者かどうかが争われたケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報1998号より)
平20・1・28民一九部判決、一部認容、一部棄却(控訴) 賃金等請求事件、東京地裁平17(ワ)26903号 ファーストフッド店の店長について、労働基準法41条2号の管理監督者には該当しないと判断された事例
この判例から学ぶ
1.労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)の2号では、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」が挙げられ、管理監督者は労働時間等に関する規定は適用されないとなっている。本件では、店長はここでいう管理監督者に該当するかどうかが争われたものである。
2.行政の解釈では、「管理監督者とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである」という基準を示している。(管理監督者の関係通達、昭22.9.13発基17号、昭63.3.14基発150号に詳しい)
3.裁判例では、(1)職務内容や権限と責任(2)経営者との一体性(3)労働時間に関する自己裁量性(4)相応しい待遇など、を管理監督者であるかどうかを判断する判断基準としている。
4.被告は、ファーストフッドチェーンを運営する大手企業、原告は当該チェーン店の店長である。この企業では店長は管理監督として扱われているために、法定労働時間を超える労働時間については、割増賃金が支払われておらず、店長が過去2年分の割増賃金の支払いを求めて訴訟を起こしたものである。当然のことながら、店長は前段で触れた管理監督者であるかどうかが主な争点となった。
5.店長である原告の主張に従うと、争点は次の6点である。
争点(1)労働契約上、原告は法定労働時間を超えて労働する義務を負っていない旨の確認を企業側へ求め、本件紛争を直接かつ抜本的に解決することを求める。
争点(2)店長は、管理監督者に当たらない。
争点(3)管理監督者に当たらないとされた場合の支払われるべき過去2年間の時間外割増賃金及び休日割増賃金の金額の算定。前者は417万円、後者は99万円、合計517万円となる。
争点(4)原告は、労働組合がないために東京管理職ユニオンに加入し、被告に対して店長の長時間にわたる過重労働を止めることや、時間外割増賃金を支払うことを求めてきたが、改める様子がないので被告は原告に対して、「付加金(注)」として時間外割増賃金及び休日割増賃金の合計額を支払うべきである。
(注;付加金とは、労働基準法114条に定められており、会社側に未払いがあった場合には、同額を請求することができることをいい、裁判所がこれを判断することを指します。)
争点(5)長時間労働を強いられ、その結果健康被害が発生し、家族との関係にも支障を来たすなどして、著しい精神的苦痛をともなった。この精神的苦痛に対する慰謝料として300万円が必要である。
争点(6)通勤に要した高速道路料金の支払いを企業側へ要求する。
6.上記の原告の主張に対する裁判所の判断は次の通りである。
争点(1)原告が管理監督者に当たらないと主張して、時間外割増賃金を請求している以上、これに加え当該権利関係の確認を求める正当な理由はない、とした。
争点(2)労働基準法や判例を踏まえた上で、店長の職務内容(部下への人事権、従業員の採用権限、従業員の就業時間管理、店舗の営業時間管理、店舗の損益計画の作成、店舗資産管理、近隣の商店街との折衝、本社会議への出席、店長自らの労働時間管理、店長に対する処遇など)を具体的に認定した上で、店長は管理監督者には該当しないと判断されたが、その理由は次の通りである。
ア.店長の権限について、
・店長以上の上位職に昇格していく社員を採用する権限まではなく、労務管理に関して経営者と一体的立場にあったとは言い難い。
・店舗の運営管理においては、全国展開する飲食店という性質上、店舗で独自のメニューを開発したり、原材料の仕入れ先を自由に選定したり、商品の価格を設定するということは予定されていない。
・店長会議への出席についても、経営方針の決定に関与するものではない。
・以上、店長の権限は店舗内の事項に限られるものであって、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものと言えるような職務と権限を付与されているとは認められない。
イ.店長の勤務態様について、
・企業で定められたシフトマネージャーに就かなければならない状況が発生し、労働時間に関する自主裁量性があったとは認められない。
・上記の点については被告より、店長の部下育成能力不足によるものであるという指摘もあるが、他の店長についても生じている現象であり、原告個人の能力の不十分さに帰属するのは相当でない。
・店長は配布されたマニュアルに基づき、店舗運営を行う立場であるに止まるから、かかる立場にある店長が行う上記職務は、特段、労働基準法が規定する労働時間等の規制になじまないような内容、性質であるとはいえない。
ウ.店長に対する処遇について、
・C評価基準による店長の年額賃金は、下位の職位のマネージャーより低額で、その労働時間もマネージャーを超えている勤務実態を併せ考慮すると、労働基準法の労働時間等の規制の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては、十分であるといい難い。
・各種インセンティブが設けられているとはいえ、全ての店長に支給されるものではなく、店舗の他の従業員もその対象にしているので、管理監督者にたいする代償措置として重視することはできない。
以上によれば、被告における店長は、その職務内容、権限及び責任の観点からしても、その待遇の観点からしても、管理監督者に当たるとは認められない。したがって、原告に対しては、時間外労働や休日労働に対する割増賃金が支払われるべきである。
争点(3)被告が管理監督者でないとすると、過去2年間の時間外割増賃金及び休日割増賃金の額は、503万5,000円と認められる。
争点(4)付加金の額であるが、原告が、スウィングマネージャーの育成、確保ができていなかったこと、店長の平均的な時間外労働時間を上回ることが多かったことなどを考慮すると、付加金の額は時間外割増賃金及び休日割増賃金の合計額の5割である251万7,000円が相当である。
争点(5)被告が原告に対して労働基準法に違法した長時間労働を強いたと認めるに足る証拠はないし、他に被告に不法行為を生じさせるような具体的な事実の主張、立証もない。また、時間外割増賃金と付加金が支払われることで慰謝されるので、この点における原告の主張は理由がない。
争点(6)原告は、被告の実務上必要とされる高速道路料金支給申請をおこなっていないので、被告に対してその支払いを求めることはできない。
7.上記に見るように裁判所は、店長業務の細部に亘って認定をおこなっている。チェーンストアーシステムは、本社と店舗という2つの異なる機能を持つ分業の仕組みで成り立っている。店長は、店舗運営を受け持つオペレーションの責任者であり、そのプロである。当該チェーンのように店舗数が増えれば増えるほど、この傾向は顕著になる。こう考えると裁判所の判断は妥当であろう。
8.当該ファーストフッド企業は、東京高裁へ控訴したが、同年8月より新報酬制度を導入して、店長約2000人、地域の店舗管理者の数百人を対象に残業代を支払うことになった。
9.店長は管理監督者かどうかという問題は古くからある。店長になると、残業代の実計算がなくなり手取り収入が減り、部下の方が給料が多くなる、という逆転現象で問題にされて来た。これが今日のように訴訟まで到らなかったのは、店長が一種の名誉職と見られた時代があったからだろう。だが低成長、店長とマネージャー以外は全てパートタイマーとアルバイト、厳しい業績評価と成果主義、週単位の本社からの営業指示、現場での熾烈な他社との競争、企画・計画業務の本社集中など、質的に店長の業務内容が変わってしまった。本判例を自社の管理監督者に置き換えたときにはどうかを問い直すにはいい機会であろう。
10.最後にフランチャイズ店舗においては、加盟店オーナーが店長を兼ねているケースが多いが、雇われ店長を雇用する際には、オーナーと雇われ店長との間で交わす労働契約において、ここで取り上げられていることが問題になるので注意が必要である。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の1998号
2008年9月9日 厚生労働省から次のような通達が出ています
多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について
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