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判例 23
コンビニのロス(廃棄・棚卸ロス)・チャージは本部の不当利得であるとして加盟店が起こした返還請求訴訟において、最高裁が本部のチャージ算定方式に合理性を認め、更に審理を尽くすために原審へ差し戻したケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報1980号より)
平19・6・11二小法廷判決、破棄差戻 不当利得返還請求事件、最高裁平17(受)957号、
1審東京地裁平14(ワ)5769号、平16・5・31判決、2審東京高裁平16(ネ)3368号、平17・2・24判決
コンビニエンス・ストアーのフランチャイズ契約に加盟店は運営者に対し加盟店経営に関する対価として売上高から売上商品原価を控除した金額に一定の率を乗じた額を支払う旨の条項がある場合において消費期限間近などの理由により廃棄された商品の原価等は売上高から控除されないとされた事例
この判例から学ぶ
1.上告までの経過は次の通りである。
(1)1審東京地裁平16・5・31判決、原告である加盟店の請求を棄却した。
(2)2審東京高裁平17・2・24判決、控訴人である加盟店の請求を一部認容した。
(3)最高裁平19・6・11判決、上告人(フランチャイズ本部)の敗訴部分を破棄し、東京高裁へ差し戻した。
2.本裁判は、コンビニエンス業界において長い間本部と加盟店との間で争われてきたロス・チャージの支払いの妥当性をめぐる一連の訴訟の最高裁判決である。
3.ロス・チャージをめぐる紛争ついては、その意味、用語の使用方法、計算方法、契約締結時の本部説明、契約書上の記載、マニュアル・関連書類・帳票への記載、トレーニング時の説明などを争点にして、本部と加盟店の双方から主張・立証や反論が出尽くしていると思われるので、ここでは省略する。
4.本件において、ロス・チャージの計算方法は本部方式によるのが妥当である、と最高裁が判断した理由は、(1)フランチャイズ契約書の文理、(2)契約書と付属明細書との整合性、(3)契約締結に至る事情の3つに要約できるであろう。
5.だが本判決には、最高裁小法廷4名の裁判官のうち2人の裁判官から補足意見がついている。その内容は、実務上示唆に富むものなので、やや長文になるが次に紹介しておきたい。
6.補足意見は次の通りである。
 『 私たちは、本件条項に定めるチャージの算定方法の解釈については、法廷意見のとおりと考えるが、本件条項の定め方が、明確性を欠き、疑義を入れる余地のあったことが、本件のような紛争を招いたことにかんがみ、このような契約条項の定めの在り方について、意見を述べておきたい。
 チャージを定めた本件条項は、「乙は、甲に対して、セブンイレブン店経営に関する対価として、各会計期間ごとに、その末日に、売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いたもの)にたいし、付属明細書(二)の第三項に定める率を乗じた額(以下、セブンイレブン・チャージという)をオープンアカウントを通じ支払う」と規定している。これによれば、チャージは、売上総利益の一定割合であること、売上総利益は、売上高から商品原価を差し引いたものであることが規定されているが、「売上商品原価」についてはこれを定義するところはなく、本件契約書中の他の条項においても、「売上商品原価」の定義規定はない。そして、「売上商品原価」という言葉は、企業会計上一般的にいわれている売上原価と解することもできるし、売り上げた商品の原価と解することもでき、「廃棄ロス原価」及び「棚卸ロス原価」がこれに含まれるが否かが本件で争われたのである。
 本件においては、本件契約書十八条一項において引用されている付属明細書(ホ)二項には、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が営業費となることが定められていること、上告人の担当者が被上告人に対し、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を営業費として会計処理すべきこと、それらは加盟店経営者の負担であることを説明したこと、加盟店店舗に備え付けられているシステムマニュアルの損益計算書についての項目に、「売上総利益」は売上高から「純売上原価」を差し引いたものであること、「純売上原価」は「総売上原価」から「仕入値引高」、「商品廃棄等」及び「棚卸増減」を差し引いて計算されることが記載されていたこと等法廷意見記載のような諸事情を考慮して、本件条項所定の「売上商品原価」には、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価は含まれないと判断したものである。
 しかし、本件条項の解釈として、上記のように解釈することが相当であるとはいうものの、本件契約書におけるチャージの算定方法についての規定ぶりについては、明確性を欠き、疑義を入れる余地があるといわなければならない。本件契約である加盟店基本契約は、上告人が一方的に定めたものであって、加盟店となるには、これを承諾するしかなく、これを承諾することによって、加盟店契約が締結されるものであるところ、チャージがいかにして算出されるかについては、加盟店の関心の最も強いところであるから、契約書上それが加盟店となる者に明確に認識できるような規定であることが望ましいことはいうまでもなく、また、そのような規定を設けることが困難であるという事情もうかがうことができない。チャージは、加盟店に対する店舗経営に関するサービス等に対して支払われる対価であることから、加盟店としては、店舗経営により生じた利益の一定割合をチャージとして支払うというのが、一般的な理解であり、認識であると考えられるのである。ところが、廃棄ロスや棚卸ロスは、加盟店の利益ではないから、これが営業費として加盟店の負担となることは当然としても、本件契約書においては、これらの費用についてまでチャージを支払わなければならないということが契約書上一義的に明確でなく、被上告人のような理解をする者があることことも肯けるのであり、場合によっては、本件条項が錯誤により無効となることも生じ得るのである。
 加盟店の多くは個人商店であり、上告人と加盟店の間の企業会計に関する知識、経験に著しい格差があることを考慮すれば、詳細かつ大部な付属明細書やマニュアルの記載を参照しなければ契約条項の意味が明確にならないというのは、不適切であるといわざるを得ない。それでも、上告人担当者から明確な説明があればまだしも、廃棄ロスや棚卸ロスについてチャージが課せられる旨の直接の説明はなく、これらが営業費に含まれ、かつ、営業費は加盟店の負担となるとの間接的な説明があったにすぎないというのである。上告人の一方的な作成になる本件契約書におけるチャージの算定方法に関する記載には、問題があり、契約書上明確にその意味が読み取れるような規定ぶりに改善することが望まれるところである。』
以上が補足意見の内容である。
7.上記の補足意見から実務上学ぶべき点を3つ挙げておきたい。
(1)ロイヤリティ(名称も本部によって異なる点にも注意)の徴収の仕方にはさまざまな方法がある。公序良俗に反しないかぎり、ノウハウ利用の対価であるので、こうでなければいけないというものはない。ロイヤリティの計算と徴収の方法については、どこの本部も、何らかの意味、狙い、営業上の背景などを考慮して計算方法を決めている場合が多い。それだけに、契約当事者間でその意義について誤解の余地が生じないようにしておかなければならない。そうすることではじめて、本部と加盟店が理念を共有できるのである。
(2)フランチャイズ契約は、契約の内容を本部が一方的に定めて、予め書式を作成しておくという特徴を持つ。そして契約書そのものには、契約内容の詳細を明記することはない。その内容は、事業説明会、募集パンフレット、フリップチャート(紙芝居式の説明資料)、付属明細書、管理・会計規定、マニュアルの一部などで加盟希望者へ説明され、契約書の調印に至る。だが加盟交渉の過程は長く、ノウハウの開示も段階的に伴うので、契約調印が先行する場合もあり、必ずしも理想通りにことは運ばない。ここにトラブルが生まれる隙が生じやすい。
(3)補足意見は、「場合によっては、本件条項が錯誤により無効となることも生じ得るのである」と述べ、契約の錯誤無効の可能性についても言及している。ロイヤリティの徴収方法に限らず、フランチャイズ・パッケージの内容は、複雑にならないように設計し、加盟希望者の誰もが同じ受け取り方をし、容易にそのパッケージの中身を理解し、オペレーション上齟齬を来たさない内容でシンプルに構築しておくことである。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の1980号
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