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判例 19
美容室のフランチャイズにおいて、加盟店が赤字を理由に本部に損害賠償を請求したが棄却されたケースであるが、本部のリジョナル・フランチャイジー(代理店)が関係しているケース
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報1521号より)
平成5年11月30日民18部判決、甲事件棄却、乙事件認容(控訴) 東京地裁平2(ワ)6006号(甲事件)・同3(ワ)4324号(乙事件) フランチャイズ契約について、加盟店の閉店に伴う本部への損害賠償請求が否定された事例
この判例から学ぶ
1.これは、美容室のフランチャイズに関する裁判で、甲事件は加盟店(静岡県下で開業)が赤字になり本部に対して損害賠償を請求したが、加盟店が敗訴したものである。乙事件は、上記の本部と静岡地域を統括する契約を交わしたリジョナル・フランチャイジー(このように呼ばれ、括弧で代理店となっているが、サブ・フランチャイザーのことであろう)が、本部に代わって加盟店に対してマンスリー・フィーや商品代金の支払いを請求し、これが容認された事件である。この乙事件が珍しいのでここで取り上げた。
2.加盟店(甲事件原告)は、洋菓子の製造販売の経験があるが、美容室経営の経験はない。フランチャイズ加盟後約1年半で赤字になり、本部(甲事件被告)に対して損害賠償を請求した。
3.加盟店は、赤字になった理由を簡単にまとめると三つ挙げている。一つは本部の独占禁止法違反の不法行為、二つ目は、本部の契約締結上の過失、三つ目は、本部の債務不履行である。
4.一つ目の加盟店が主張する本部の独占禁止法違反とは、本部が提示した「平均的損益計算書」に記載された数値は、過去の実績に基づくものではない見せかけのもので、虚偽又は誇大な表現でもって加盟を勧誘するための内容であった。又本部から提供を受ける商品や素材は、一般市場価格より安価に供給を受けると聞いていたが、そうではなかった。これは明らかに、独占禁止法の「欺瞞的顧客誘引」に当たる違法な勧誘行為である。
5.二つ目の本部の契約締結上の過失についての加盟店の主張は次の通りである。本部は加盟店を募集するに当たっては、加盟店になろうとする者が、フランチャイズ契約を締結するかどうかを判断するための正確な情報を提供すべき信義則上の義務を負う。ところが、本部の損益計算書は科学的手法により正確に調査した結果算出したものではなく、勘や直感に基づき計算したものであった。
6.三つ目の本部の債務不履行については、従業員が十分に揃わないのに開店させた、とするものである。本来、開店できる程度にまで従業員を指導する債務を本部は負っており、開店を延期するように指導すべきであったが、本部はこれを怠ったと加盟店は主張した。
7.以上三点についての裁判所の判断は次の通りである。欺瞞的顧客誘引については、本部側の行為にその事実が認められないとしている。その内容は(証拠略)で詳細ではないが、よくあるセールストーク上の問題、あるいは水掛論があったのだろう。二番目の本部の信義則上の義務違反については、損益計算書の算出方法と加盟店が受けた損失との間に因果関係を認めることができないとしている。最後の債務不履行については、開店前後約20か月の間に美容師だけでも延べにして120名以上を、接客の傍ら指導に当たらせた事実が認められるので、本部がその債務を履行しなかったとは認められないとしている。
8.このように、加盟店が本部に対して起こす損害賠償請求の裁判においては、加盟店が事実関係と因果関係を主張し、立証することは難しく、勝訴することは容易でないことが分かる。
9.乙事件については、リジョナル・フランチャイジー(代理店)が加盟店に対してマンスリー・フィーと商品代金の支払い請求を訴え、これが認容された裁判である。
10.本部は、静岡地域に於いてはリジョナル・フランチャイジー(代理店)に本部の地位を譲渡する契約を結んでおり、加盟店の本部に対する債務については、裁判所は、この代理店は当然請求する権利があり、加盟店は支払いの義務があるとした。
11.加盟店は、本部から代理店への地位の譲渡については、本部から書面による通知があることがフランチャイズ契約の前提になっていたが、それが行われなかったと反論したが、認められなかった。
12.本部から書面の通知がなかったことは事実のようだが、開業前からのリジョナル・フランチャイジーとの交渉経過や加盟店の取引行為や実態を見極め、通知があったと同じであると裁判所は判断した。この実質的な取引行為で裁判所は判断を下している点は、実務上大変参考になるだろう。
13.サブ・フランチャイズ制においては、本部(マスター・フランチャイザー)とサブ・フランチャイザー(本件でのリジョナル・フランチャイジー)との契約関係が加盟店には分かりにくく、加盟店がフランチャイズ契約を結ぶ相手は誰で、開店時あるいは開店後の指導・援助は誰が行ってくれるのか、フランチャイズ・パッケージの将来に向かってのバージョンアップ(ノウハウやシステムのさらなる向上)は誰が行ってくれるのかなどを加盟店は契約書上確認しておく必要がある。本件では、本部、リジョナル・フランチャイジー(代理店)、加盟店の三者の権利義務の関係がもう一つ曖昧で、これがトラブルの原因にもなっているように思える。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の1521号
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