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判例 17
営業秘密の秘密管理性とは何かの判断事例
実務を担当する者が判例から何を学ぶかを解説しています。
【判例】
判決日 裁判所 判例内容(判例時報1862号より)
平成16年4月13日 東京地裁平15(ワ)10721号 イベントの企画制作会社の顧客リスト、登録アルバイト員リスト及び見積書等が営業秘密に当たらないとされた事例
この判例から学ぶ
1.この判例は、フランチャイズに関するものではないが、不正競争防止法における「営業秘密」に該当するための秘密管理性とは何か、且つ「個人情報保護法」でいう個人情報取扱事業者がデータを取り扱う際に実務上で参考となる内容が裁判所の判断の中に含まれているのでここでとりあげた。
2.原告は、音楽制作、音楽家の養成、音楽著作権管理、コンサートや各種イベントの企画・制作等を業務とする有限会社であり、主催者ないしその元請からイベント現場の運営や管理について下請を受注し、現場へ派遣する実働員のアルバイト員を登録し、その中から現実のイベント日に実働できる者を選んで現場に派遣する業務を行なっていた。この会社が保有するデータには次のようなものがあった。やや煩雑になるが、実務上参考になるので列記しておく。
(1)顧客リスト;顧客名、担当者名、電話番号、FAX番号の情報
(2)登録アルバイト員リスト;氏名、生年月日、最寄駅、連絡先、携帯電話番号、スーツ保有の有無、運転免許保有の有無、髪型・髪色、ピアスの有無、備考欄記載情報
(3)応募した者の登録表と経歴:氏名、生年月日、住所、経歴、運転免許保有の有無
(4)見積書;顧客名、会場名、催物名、見積金額、催物の日時・時間帯、受注事項
以上、原告は4種類の情報を保有し、これらを営業秘密と主張した。
3.被告ら(4名いる)は、もと原告の会社に勤務していたアルバイト従業員で退社後に合資会社を設立し、原告と競合する行為を開始した。
4.これに対して原告は、被告らは上記(1)から(4)までの「営業秘密」を不正の手段で取得し使用又は不正の利益を得る目的で使用したので、不正競争防止法3条に基づき、情報の使用差止め並びに情報を記録した媒体の破棄・消去を求めるとともに、侵害賠償を請求した。しかし、裁判所は原告の請求をいずれも棄却した。なお、原告は被告らの当該情報にかかわる不正競争行為を特定し主張はしていないので、不正競争行為があったかどうかに関する裁判所の判断はない。
5.不正競争防止法でいう「営業秘密」に該当するためには次の3つの要件を充たす必要がある(同法2条4項)。これらの要件の中で本件の事例は、秘密管理性はなかったというのが、裁判所が原告の請求を棄却した理由である。
(1)秘密管理性;秘密として管理されていること。
(2)有用性;事業活動に有用な技術上・営業上の情報であること。
(3)非公開性;公然と知られていないこと。
6.ここでいう「秘密管理性」とは、具体的事情に即して判断されるものであり、次の点が考慮された。
(1)データは従業員全員が閲覧可能のパソコンに保存され、パスワードの設定がなく、データへアクセスできる者を制限する措置をとっていなかった。
(2)データのコピーを全員に配布し、その部数を確認し、事後回収することもなかった。
(3)配布した顧客リストを第三者へ漏洩することを厳格に禁止する措置をとってはいなかった。
(4)データのファイルの背表紙には赤で「社外秘」とは書かれていたが、それを保管するローカーには鍵はなく誰でも閲覧が可能であった。
(5)データを作成したパソコンに残された情報を、データ作成後に消去することを徹底しなかった。
裁判所は、原告は以上の点を従業員に徹底させ管理・監督していなかったとしている。つまり原告が所有する情報は、秘密管理性に乏しく、不正競争防止法2条4項に該当するということはできないとした。
7.この判例からは、情報が営業秘密として認められ且つその漏洩を防ぐには、どのような措置を企業はとれば良いかを学ぶことができる。従業員と結ぶ雇用契約、誓約書、就業規則などには、企業の費用と労力投下のもとで集められたデータが情報として営業秘密であることを明らかにし、その漏洩を禁ずると共に、漏洩することのないようにその措置を具体的に取ることである。具体的な措置とは上の6.に述べた通りである。
資料出所;判例時報社発行の「判例時報の1862号
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